ちょっと、今年2013年はじめのことを振り返ります。
ある場所で行われていたボードゲームイベントに、おじゃました時のことでした。
ボードゲームをひたすら遊ぶ、というよりは、「ゲームをツールにコミュニケーションを楽しむ会」といった趣きのイベントで、それはそれでかなり楽しかったのですが、途中である一つのオリジナルゲームが披露されました。
それは、コーヒーを題材に作りあげられたもの。
単純なルールなのにおもしろく、そのゲームをきっかけに同じテーブルのひとたちとすっかり仲良くなってしまったのです。
「かんたんなゲームをはさむことで、こんなに仲良く話せるんだ」
と、びびびっときた、とまでは言いませんが、ちょっと衝撃を受けたのを覚えています。
そのゲームをデザインしたのは、タンサンファブリークさんというチームでした。
2か月後、ぼくはぼんやりと、「映画の新しい楽しみ方はないかなあ」と考えてました。
そのときに、ふとこのゲーム会のことを思い出したのです。
すぐに連絡をとり、ぼくは頭のなかのアイディアが固まるより早く、こう伝えました。
「映画を観ることって、ゲームになりませんか」
非常にアバウトな提案でした。ほんと申し訳ないと思います。
でもタンサンファブリークさんは、このとっぴょうしもない話に、ちゃんと応えてくれたのです。
もともと、映画もけっこう好きだったタンサンファブリークの人たち。
話していくうちに、どんどんアイディアをまとめていってくれました。
「映画の感想は、人に話したくなるもの―」。
でもきっかけがないと、なかなか自分から言い出せない人もいますよね。
「みんなが分かりあえる意見もいい―」。
でも、マニアックな意見こそおもしろいし、その人の個性がでる。
さらに、他の人にもあたらしい発見が生まれるのでは・・・。
そんなこんなで練り上げながら。
せっかく考えたんだし、じゃあ遊んでもらいましょうか、と、今年4月のキネプレ協力の上映イベントでお披露目。
ショートムービーを観たあと、「ではカタラシテーナというものを遊びます!」と、デビューしたのです。
おかげさまで、非常に好評。
「そんな見方があったんだ!」
はげしく頷いているお客さんを見て、うれしくなってきたのを覚えています。
「もっかい観てみたいなあ」
そんな声もちらほら。
感想をゲームにすることで、お客さん同士の話も弾む。
新しい発見も生まれてきて、「もう一回観たく」なることも。
なんて素晴らしいツールを作ってくれたんだろう、と感じ入ったものでした。
じつは、作品をつくった監督たちもその場にいたのですが、面白いなあと思ったのは「監督そっちのけでたくさんの話題がひろがった」ことでした。
ふつう監督がいると、トークの話題はやっぱり監督の作品への思いや、撮影の裏話などになりがちです。
でもカタラシテーナの時はちがいました。作り手に遠慮せず、あーだこーだとたくさん意見が出る。
それが妙に「いい感じのほったらかし」に見えたんです。
作品が作り手を離れて、はじめて観客のものになった。
そう言えるかもしれません。
ぼくは前、こんなことをツイッターでつぶやきました。
「最初はぴんとこなかった映画でも、一度カタラシテーナを挟むと、なんていうかその“土がちょっと掘れてくる”んです。温泉を発掘する感じ」
作品をぼくらの手元に引き寄せ、隣のひとたちと一緒になって土を掘る。
そんとき湧き出てくるものは、たぶんきっと、ちょっとあたらしい楽しみ方なのだ。
カタラシテーナを商品にしよう、と思ったのは、この「コミュニケーションがはじまるキッカケ」を、家庭やグループの手元においといてほしい、と思ったからでした。
だって、楽しいんですもん。
映画観たあと、そのままのんべんだらりとしゃべるのも心地よいけれど、すこしこういう「縛るルール」があるほうが、むしろ場がいきいきとして見えるもんです。
それに、すこし興味があったのです。
ぼくらがイベントや映画祭でお披露目したのは、いわば「はじめて会う人どうしで映画について語り合う」もの。
じゃあそれを、もともと知り合いどうしで遊ぶと、どんな楽しさが生まれるんだろう、って。
「ああ、このひとはこんな感覚で、いつも作品を見ているんだな」
とか。
「その視点は面白い。こんど、ちょっと詳しく話しこんでみたいな」
とか。
いちばん素敵だな、と思うのは、
「じゃあ次は何の作品観る?」
ってはなしが生まれやすいこと。
デートでも、「別れ際に次回の約束を取り付けろ!」なんていいますもんね。
そうやって映画を軸にして、どんどん人が集まる機会が増えていったら、すばらしいね。
そんなご家庭用のお手軽カタラシテーナ。
タンサンファブリークさんのパッケージが、これまたかわいいんですよ。
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