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京都シネマゴールド会員募集だヨ!全員集合。(京都シネマ)

京都シネマからの寄稿です)

京都シネマ 谷口正樹

前回ぼんやりと予告したとおり、京都シネマ開館10周年の特別企画の一環としてゴールド会員を募集することが決まった。“ゴールド”、ああ、なんてすてきな響きなんだろう。順風満帆で目の前に広がるのは無限の可能性、みたいな極限に近いポジティブなかんじがする。
さらに“ゴール・ド・会員”と文節を区切ってみると、どこかフレンチ風のニュアンスさえ漂ってくるではないか。まさに現代の錬金術と言える。もちろんウィリアム・シェイクスピアのあまりにも有名な格言、“輝くものすべて金にあらず”を持ち出すまでもなく、本当に大事なものはえてして外見ではなくその内面に宿ることが多い。(ちなみに原文は「輝くもの必ずしも金ならず、とは汝も幾度と聞きしはず。わが外面のみを求めて命を売りし者多かりき。金色に輝く墓も蛆虫を内臓せり」。戯曲『ヴェニスの商人』の第2幕の台詞だ。どこかスプラッターっちっくな奇妙なシーンでだいすき。)
では “京都シネマゴールド会員”の中身とはどういうものだろうか。やや前置きが長くなったが今回の主題はそのあたりにあるのではないかと、自分で書きながら見当をつけてみた。

とは言ってみたものの、せっかく提供いただいたこのスペースでゴールド会員の募集要項を長々と展開するのはやはり心苦しい。ユーモアセンスの欠片もないただの映画オタクと思われるのならまだしも、角刈り食パン頭のマジ宣伝くん、などと陰口をたたかれるのはぼくの本望ではないのだ。(もちろん角刈りにも食パンにもまるで含むところはない。なんとなくの言葉の雰囲気で勝手に言っている。)
ここはひとつ妥協点ということで、京都シネマTシャツにスポットをあてて紹介しようと思う。実は今回、ゴールド会員に入会してくれたすべての人に、10周年記念で特別に作る京都シネマオリジナルTシャツをプレゼントするつもりだからだ。当然「え、そんなのいらねえし┐(‘д’)┌」という意見だってあるだろう。ぼくだって結婚式に呼ばれてよく知らない人たちの写真がプリントされたTシャツをもらったときはずいぶん途方に暮れた。どうして幸せな2人がそのようなものを作成する必要があるのかうまく理解することができなかったからだ。

そこでぼくはこう思った。
「京都シネマTシャツの製作過程の現場に足を運ぶことで見えてくるものがあるんじゃん?(>ω<)」。
その時の様子を正確に伝えるのは難しい。あえて言うなら映画『ブレードランナー』のルトガー・ハウアーの最後の名シーンにちょっと似ている。お前たちには信じられないような光景をさんざん目にした、みたいな台詞のところだ。イヤ、ちょっと違うな。
まあいいや。ようするにTシャツ工場いっぱいに京都シネマTシャツがあふれかえっていて、それはいつもぼくたちスタッフが着ている時とはまったく別のものに見えたってこと。うまく言えないんだけどそこでぼくは圧倒的な物量に圧倒されてしばらく呆然としていた。お客さんに対する責任とか、映画館にできることとか、いろんな思いで頭がパンクしそうになるくらいに。変な話だけど。

10年も続いたのはほんとに、いつも観に来てくれるお客さんのおかげだ。とにかくぼくたちはゴールド会員に入会してくれたみんなに京都シネマTシャツをプレゼントする。それはぼくたち京都シネマスタッフ全員の“感謝の気持ち”と“映画愛”をあらわすシンボルなのだ。どうか気持ち悪がらずにもらってください。夏とかきっと重宝すると思うな、実際のとこ。