(塚口サンサン劇場からの寄稿です) |
なんやかんやと忙しい“フリ”をしている間にもう3回目です。時が経つのは早いものです。季節は春も終わりに近づき、初夏の匂いがしてきました。旅立ちと、新たな門出も一段落がついたのではないでしょうか。
当劇場も、アルバイトのみんなの卒業と、新しい仲間との出会いがありました。今回は、そんな「映画館で働く人々」についてお話をさせていただきます。
映画館のお仕事と言ってもいろいろあります。チケットを販売したり、ポップコーン等を売ったり、映写をしたり、上映作品を決めたりと様々です。
私は当劇場に入った時から映写の仕事に就きました。現在は、デジタル映写機を導入しておりますが、当時は35mm映写機しかありませんでした。(この映写機は今も毎日元気に稼働しております!)まったくの素人が「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいな事ができるのかと不安でいっぱいでした。
そんな私を指導してくれたのは、ベテラン映写技師のおじさんでした。教え方はとてもシンプル。「えーか。映写ってな、光当てたら映る。そんなもんや。」心の中で「どんなもんや」と軽くツッコミながらも、そのおじさんにいろいろ教えてもらいました。
そのおじさんはいつも同じメロディーの鼻歌を歌いながら映写をしていました。ある時、「それは何て曲ですか?」と聞くと、「わしに聞かれても知らん。」とシュールな答えが返ってきました。
しかし、映写技師歴数十年のベテランの技はすごかったです。専門的なことになるので内容は割愛いたしますが、私には今でもとうてい無理なことばかりでした。「すごいですね!」と言うと「ワシはこれしか出来へんからな」と言った時は「職人の顔」でした。昔の映画館は、映写に限らずこのような「職人」と呼ばれる方が多かったように思えます。
余談ですが、私は学生時代に梅田の某映画館で劇場売店のアルバイトをしておりました。そこでも、「売店の職人」と思えるおばちゃんがたくさんいました。ある時、外国人の方が『チキンナゲット』を指差し「what is this ?」と繰り返し聞いてこられ、英語がよくわからないおばちゃんが困っていたので、「これは何だ?と聞いてますよ」と言うと、そのおばちゃんは納得したような顔で大きくうなずき、その外国人の方の顔をじーっと見つめて、おもむろに人差し指を自分の口に当てて大きな声で言いました。
「か」 「し」 「わ」
これぞ浪花流異文化コミュニケーション! キョトンとする外国人の方に繰り返し「かしわ」を連呼するおばちゃん! あの光景は一生忘れられません。
話がだいぶ逸れましたが、やはり映画館に漂う独特の空気を作り出すのは人なんです。劇場ロビーは、夢の世界と現実の世界が交差するとても素敵な空間です。
当劇場は、そのロビーに来られる皆様に少しでも「映画館で映画を見る楽しさ」を伝えられるように日々がんばっております。大袈裟な言い方かもしれませんが、「映画館」という場所も、「作品の一部」として楽しんでいただければ、そこで働く者にとってはこの上ない喜びなのです。
ぜひ、映画館で映画をお楽しみください。