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陶酔!ヘルツォーク(京都みなみ会館)

京都みなみ会館からの寄稿です)

西橋卓也

ついに!京都みなみ会館にも鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督の特集がやってきました!!

完全に私事ですが、僕とヘルツォークとの出会いを書かせていただきたいと思います。
最初、近所のレンタル屋さんで「小人の饗宴」というタイトルを見つけていたとき、ゲテモノ(笑)映画好きの僕は心を揺さぶられ、パッケージを手に取って見ると、小さいおじさんが笑いながらデカイバイクにまたがっている、という何とも不気味な表紙でした。もうこの時点でどストライクを食らった僕は、早速借りて、初めてパゾリーニの「ソドムの市」を借りたときのような、恐さ半分ワクワク感が堪らない思持ちで家路に着いて記憶があります。

そしていざ鑑賞すると…予想をはるかに超える狂い様!小人の遊びの革命…ヘルツォークという監督に身震いしました。
その後、ヘルツォーク監督作品を観ていこうと決め、次に鑑賞した作品は「アギーレ・神の怒り」でした。この映画はアンデスの奥地にある黄金郷エルドラドを見つけるべく派遣された部隊内でクラウス・キンスキー演じるアギーレが反乱を起こし、様々な災難に見舞われながら黄金郷を目指し奥地へ進んでゆく、というストーリーなのですが、この映画の冒頭での濃い霧に包まれて霊的にそびえるアンデスの山岳を進む、蟻のごとき人々の長蛇の列を俯瞰するシーンはあまりにも神秘的で鮮明に記憶に焼き付けられました。


『アギーレ・神の怒り』

そしてなんといってもこの映画で出会った怪優クラウス・キンスキーの神をも恐れずにギラギラした人間の欲望のままに突き進む狂気の演技には圧倒され、また後々、この俳優の娘が「パリ・テキサス」や「テス」のあの美しき女優ナスターシャ・キンスキーであることを知り、「ええっ!どうやったらこんな男からあんな美人が生まれるの!?」とさらに驚愕しました(笑)


『フィツカラルド』

そういうことでヘルツォークとクラウス・キンスキーの魅力にどっぷりはまり、次に観た映画が「フィツカラルド」でした。この映画は、再びキンスキー演じるフィツカラルドという男がアマゾンの奥地にオペラハウスを建てるべく、資金繰りのために無尽蔵のゴムの木を有するアマゾン河上流の未開地へ進んでゆく、というストーリーで、映画史に伝説を残した、もはや現在では実現不可能な、木をなぎ倒して森林を切り開きながら船が山を進んでゆくシーン。そのシーンの持つ奇跡的で圧倒的な映像の力に魂を揺さぶられました。ヘルツォークはフィツカラルドという自分の分身を使って夢のために途方もないことをこの映画の中で行ったのです。

「アギーレ」にしろこの「フィツカラルド」にしろ、ヘルツォーク監督の映画には夢を叶えるために手段を選ばず突き進んでゆく主人公が数多く現われます。映画の中の愚直なまでに夢を追いかける彼らを通してヘルツォークの映画は夢を見ることの大切さやロマンを教えてくれるのではないでしょうか。

《陶酔!ヘルツォーク》詳細
http://kyoto-minamikaikan.jp/archives/9732
70歳でなお最前線 九条でヘルツォーク監督特集
(※編集部注 大阪・九条のシネ・ヌーヴォでヘルツォーク特集が行われた時の記事です)
http://www.cinepre.biz/?p=4421