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毎日が“映画の異種格闘技戦”(塚口サンサン劇場)

塚口サンサン劇場からの寄稿です)


時が経つのは早いもので、もう2回目です。前回どのような内容を書いたかを読み返し、他劇場の方々の文章と読み比べ、自分の文章が小学生の夏休みの読書感想文並のレベルに愕然としております。とは言え、いきなり文章が上手くなるはずもなく、日頃あまり本を読まない自分を恨みつつ、今回も開き直っていろいろとお話をさせていただこうと思います。

塚口サンサン劇場は、今年で60年になる老舗映画館です。開設以来ずっと、その時々の話題の映画を常時上映してまいりました。その流れは現在ももちろん健在で、いわゆる“メジャー”と呼ばれる作品を中心に上映しています。ですので、所謂「ミニシアター」とは違うテイストの劇場にもかかわらず、今回の「ミニシアターの中の人」にお声をかけていただいたのも、不定期ながら実施している「企画上映」、頻繁に実施する「旧作上映」によるものと思っております。
これまでに、「時をかける少女」「パプリカ」などの名作アニメ、日本での知名度がまだ低いジョニー・トー監督作品、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」「スワロウテイル」などの音楽が印象的な作品、最近では「アメリ」など、いろいろなジャンルの作品を上映してきました。
ただ、あくまでも、通常の上映スケジュールの隙間を埋める形での上映となりますので、「企画上映」と言うほど大袈裟なものではありません。上映作品も、議論を重ねると言うよりは、雑談の中から生まれるものばかりです。ただ、大事にしているのは「映画をもっと知って欲しい」「映画はやはりスクリーンで見て欲しい」の2つです。

特に気にしているのが、「映画をもっと知って欲しい」です。「この映画見たことありますか?」「今度新作が公開されるこの俳優は、昔こんな映画に出てたんですよ」など、映画にもっと興味を持って欲しいし、映画への好奇心を刺激したいですし、名作と呼ばれる作品をもっと見て欲しいのです。
印象に残っていることがあります。ちょうど「企画上映」を始めて間もない時でした。大友克洋監督「AKIRA」の上映を検討している最中のことです。アルバイトの若い女性スタッフに『映画で「AKIRA」って知ってる?』と聞くと『知ってますよ!EXILE好きなんですよ!』えっ!まさかのEXILE!頭の中で、金田と鉄雄が「Choo Choo TRAIN」のイントロに乗って体をグルグル回している姿を想像して軽いめまいがしました。(EXILEは私も好きです!カラオケ行ったら「Lovers Again」を必ず歌いますから!)

“映画”と前置きしてのことなので驚きました。でも、そういうものだとも思います。映画館で仕事をしていると当たり前のようなことでも世間では「ん?」です。私だって、AKB48のメンバーで何人名前を言えるか?と問われたら、せいぜい45名ほどしか言えません。(これこそ「ん?」)
多くの方に映画を知ってもらうことは難しいですが、まずはきっかけの一つとして、おそらくタイトルは耳にしたことがありそうな名作や旧作の上映を継続していき、映画の面白さは時を越えることを体験してもらいたいと思います。その経験は、最新の映画をもっと面白く感じさせてくれると確信しておりますし、それが、より深く「映画の世界」へ導くことができる一番の方法だと思っています。