前項までに述べたとおり、塚口サンサン劇場のラインナップは「ザボーガー後」に多彩で幅広くなっていったし、それは2022年の今までも続いている。
コロナ禍でイベントらしいイベントが出来なくなったことが、逆にマシンガン的な怒涛の番組編成に拍車をかけたようで、2021年の1年間では335本の作品が上映されたというから驚きだ。
2021年の上映作品一覧の一部(塚口サンサン劇場ブログより)
4スクリーンしかない映画館。
年間52週・1日5回上映として、1作品を2週間ずつ上映したとしても最大で520作品だ。
つまりサンサン劇場のフルマックスの上映本数は、「約500」と言ってもいい。
その中でサンサン劇場は、番組編成で1日の上映回数をパズルのように増やしたり、企画特集を組んで多数の作品を一挙に届けたりすることに注力し、300本を超える作品を上映した。
コロナ禍の影響で、途中には1カ月強の休館や、時短営業の期間もあったはずなのに。
1か月ぐらい上映する大作映画も多数あったのに、だ。
4/25~5/31は休館していたのに335本を上映
おかげで、サンサン劇場ではずっと、お客さんによって「●●に強い映画館」と思われている、その「●●」の部分が違うことがある。
「インド映画に強い」
「旧作アニメに強い」
「重低音映画に強い」
「ミュージカルや音楽映画に強い」
「ミニシアター系の話題作に強い」
「特撮に強い」
「新作アニメーションに強い」
「フィルムの名作に強い」
「カルト的な人気のある作品に強い」
などなど。
そのどれもが正解である、というのが、この塚口サンサン劇場の番組編成のすさまじいところで、真骨頂なのだ。
こうした多彩な映画を上映する映画館だから、お客さんの声にも敏感だ。
ツイッターでも定期的に、「サンサンで◯◯を上映してほしい」という声が上がり、戸村さんは返事を返している。
もちろん無理な作品はあるが、結構な頻度で「検討リストに入ってます!」という返しが来る。
戸村さんに聞いたところ、実際大量の候補作を常に考えながら、時期やタイミングを見て上映を判断しているという。
一度、サンサン劇場の「検討リスト」をのぞいてみたいものだ。
年間300本以上を上映した映画館。その検討リストは、とんでもないぐらい膨大なものだろうから。
お客さんは、ツイッターで希望の映画を言い、劇場からの返事をもらう。
上映が決定した時は、感謝の声であふれることもある。
「かけてくれてありがとう」
「塚口の上映があるから、生きていける」
と言われることすらある。
「本来、お礼を言うのはこちらです。いつも来てくれてありがとう、って」
そう戸村さんは話すが、間違いなく塚口での上映を楽しみに日々を生きている人がいるし、映画館で観たかった作品をかけてくれる喜びは、映画好きにとって何物にも代えがたいのだろう。
しかもたまに予想以上の作品をもってきてくれたりする。
イベントがあれば抜群に盛り上げてくれ、足を運べばホスピタリティの高い接客が待っている。
「愛されるはずだ」
心底、そう思うのである。
次章では、そうした塚口サンサン劇場の、愛されるおもてなしを取り上げたい。