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第9章 番組編成編「さんをつけろよデコ助野郎」3/4

(※引き続き、戸村さんと森田の会話をお届けします)

森田:塚口サンサン劇場の番組ラインナップをながめていると、たまに「今って令和だっけ」ってなる時があります(笑)。

戸村さん:よく言われます(笑)。旧作・新作問わず、怒涛に上映を続けていますし、デジタルだけでなくフィルム映写機もいまだ現役で使ってますし。

森田:最新のファミリー映画を上映する一方でヤクザ映画をかけたり往年のフィルム映画を上映したり。
ガンダムやマクロスなどの一時代を築いたアニメも上映しますし、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のような人気の新作も届ける。毎年正月には『男はつらいよ』の上映もする。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』もちょくちょくかける。
なんて多彩な、といつも驚かされます。

戸村さん:そうですね。特にこだわりはなく、観たい人がちゃんといる作品、とくに「映画館で観たい」と思ってくれる人がいる作品を常にチェックして、その中から上映が可能になったものをどんどん出しています。
それは『電人ザボーガー』の時に学んだことで、番組編成でやっていることは10年間、おそらくほとんど変わってないんですよ。

森田:逆にここ10年では映画配信が活発になり、映画を取り巻く環境は大きく変化していきました。

戸村さん:映画配信が近年広がってきたことは、むしろチャンスだと思っているんです。わかりやすく「配信 vs 映画館」みたいな構図で語られることが多いんですが、逆かもなと。
配信のおかげで映画に新しく触れる人が増えるし、映画を観たい、と思ってくれる人を常に作ってくれる。それはとてもありがたいです。

森田:あとはそういった方を、どう映画館に足を運んでもらうようにするかを考えるだけ、だと。

戸村さん:そうです。「配信で観た映画は面白かったな、ほかにも楽しい映画はないのかな」っていう好奇心もいいですし、「スマホで観た映画だけど、これを映画館で観たらどうなるんだろう」と考えてもらうのもいい。
そんな風に思いついた時に、「塚口でやってるこの映画が面白そう」って思ってほしい。そのためにも常に「幕の内弁当」のように多彩な作品を届けつづけようと思っています。

森田:塚口はそこでさらに踏み込んで、「映画心を刺激するラインナップ」を組んでいますね。

戸村さん:「一本観たら、これも気になった」「この作品も観てみようかな」っていう風に、番組の中でも好奇心が動けばいいなと思って組んでいます。
あとは、「この時代、このタイミングでこそ観たい!」という映画ですね。過去の作品はいつ上映するべきかをいつも悩んでいますが、「ここだ!」という時期にはぜひかけたいと思ってます。

森田:たとえばそれが、中国のアニメーション映画『白蛇:縁起』が盛り上がっているときに1958年のアニメ『白蛇伝』を持ってきたり、平成がもうすぐ終わる2018年の年末に、平成を代表する大ヒット映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』をかけたり。

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戸村さん:『踊る大捜査線』は、平成最後の年末年始に「平成」を象徴する映画を上映しようと思って、この映画が思い浮かびました。ドラマからの映画、という流れの大ヒットの最初ですし、エンタメ界に大きな影響を与えた作品でもありますから、ぜひこれはやりたいと。

森田:そしていよいよ平成が終わる、となった時には、『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』を持ってきた。

戸村さん:20世紀へ時間を逆戻りさせようとする物語で、クレヨンしんちゃんの中でもファンが多い名作です。これはぜひ、「令和になる直前」に楽しんでいただきたかったんです。

森田:この「平成から令和に切り替わる瞬間」は、とくに「今のタイミングだからこそ観てほしい」というサンサン劇場の思いがほとばしっていたように思います。
そしてその中で、一番話題を呼んだのが、『AKIRA』でした。

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戸村さん:はい。元号が変わるのが2019年の5月1日。「時代が変わる」ということ、そして「2019年」。このキーワードで連想される映画がこれでした。

森田:作中の設定が2019年ですし、「来年に東京オリンピックがある」という設定も、現実と一致していたことが当時話題を呼んでいましたね。それを受けて、4月末から5月頭の、まさに「平成から令和にまたがる」期間に上映を決めたと。

戸村さん:いつのまにか時代が『AKIRA』に追いついたような感覚が皆さんにあったと思います。上映を発表した時、ツイッターでもたくさんの反響がありました。1週間限定での上映でしたが、連日満席が続きました。

森田:「平成最後に観た映画」という人、「令和の最初に観た映画」という人も、ツイッターでたくさん見られました。

戸村さん:このタイミングだったからこそ、多くの人の記憶に残る映画鑑賞になったのでしょうし、そうした機会を作れたのがとてもうれしかったです。「映画館でしかできない鑑賞体験」をちゃんと届けられたんだなと思います。

森田:マサラとか応援上映とかのイベントでなくても、「映画館でしかできない体験」はあるんだ、ということですね。それは普段の「特別音響上映」もそうですし。「日常の映画鑑賞自体をちょっとしたイベントにする」ということを常に取り組まれている気がします。

戸村さん:古い作品をただ上映するのではなく、やはり「今」を意識していきたいと思っています。「なぜこの作品を今上映するのか」ということをずっと考えていきたいですね。