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「愛される場所」が生まれた理由とは―大阪で『巡礼ビジネス』発売記念イベントが開催

書籍『巡礼ビジネス ポップカルチャーが観光資産になる時代』(KADOKAWA)の発売を記念したトークイベントが、1月22日(火)に大阪・天神橋筋六丁目のブックカフェバー「ワイルドバンチ」で開催。
著者の岡本健さんと、塚口サンサン劇場の戸村さんが登壇し、「聖地づくりってこういうことだったのか」をテーマに実施された。

『巡礼ビジネス』の著者である岡本さんは、観光学、観光社会学、コンテンツツーリズム学の分野の研究者で奈良県立大学地域創造学部の准教授。アニメ聖地巡礼についての本も複数執筆されている。
戸村さんは兵庫県尼崎市にある映画館、塚口サンサン劇場のイベント企画、宣伝などの担当者。同劇場は、マサラ上映や重低音ウーハー上映などのユニークな取り組みで注目を集めている。

『巡礼ビジネス ポップカルチャーが観光資産になる時代』

平日の夜にも関わらず満席となった今回のイベント。会社帰りのスーツ姿の方や、女性グループの参加者など客層もさまざまな中、トークは岡本さんによる『巡礼ビジネス』の解説からスタート。資料をもとに、今や2兆円を超えるアニメ市場や、一般的に言われる「観光」とはどういうものかについてわかりやすく説明が行われた。
聖地巡礼するファンが一般の観光客と違うのは、ただ迎えられるだけのお客さんにとどまらない所だという岡本さん。「消費者、体験者というよりは、何か自分を表現したり、ホスト側(地域住民)に積極的に関わりを持っていきはじめたりします」と語る。

『巡礼ビジネス』著者の岡本健さん

その具体例として、聖地でのファンの行動の写真を披露。例えばファンが持ち寄ったグッズが並ぶお寿司屋さんや、ファンが作成した地域と作品に関するガイドブックなどを紹介した。スライドに写真が写される度、ファンの情熱が感じられる光景や、そのクオリティの高さに参加者からは驚きの声が。
岡本さんは「全てにおいて表現や情報発信になっています。それがネット上にアップされると、検索した人がまた旅行する。今まで旅行会社や観光協会、あるいはマスメディアがやっていたものを地域の人たち、もしくはファンの人たちで回しているんです」とファンの表現が自然と観光ビジネスに繋がっていると話す。

さらに、聖地となった地域とファンの関係性についての興味深い話も。アニメ『らき☆すた』の聖地、埼玉県久喜市鷲宮の伝統あるお祭りでは、「らき☆すた神輿」が10年にも渡り担がれ続けているという。その秘密を、地域住民とファンとの交流からひも解いた。岡本さんが実際に取材し、巡礼するファンや地域住民との関わりで感じた面白さや驚きを再現しながらのトークに、会場は温かい笑いに包まれた。

後半は戸村さんが、「イベント上映の聖地」と称されるようになった塚口サンサン劇場のこれまでの取り組みや、それに対する思いを語った。
同劇場の初めてのイベント上映は、2013年6月に行われた、インド映画『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』のマサラ上映。戸村さんは「とりあえずやってみよう」と模索しながらのスタートだったと明かす。しかし、集まった多くの参加者は自然と盛り上がり、結果は大成功。その後は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『キングスマン』などにも応用し、大人気となった。

塚口サンサン劇場の戸村さん

戸村さんが写真とともに、参加者との交流などのエピソードを披露すると、岡本さんも興味深そうに聞き、会場からは何度も大きな笑いが起こった。
戸村さんはイベント上映について「お客さんと一緒に何かを作り上げることを、我々が楽しんでいるんです。入り口をちゃんと作ってあげれば、あとは楽しみ方を分かっている方たちばかりなので、そういう人たちにお任せしたほうがうまくいく」と語る。

実はつい先日初めてサンサン劇場に行ったという岡本さん。戸村さんの話を聞いて最後に「自分が本で書いたことが書かれる前からやられていたという感じ。楽しんでもらうために、劇場側も見て研究している。それに対して、わかってくれる人がやっていると観客も感謝してお金を出す。そうなるとみんながハッピーになる。それが巡礼ビジネスの神髄だと思います」と締めくくり、時間いっぱい語りつくしたイベントは大きな拍手で幕を閉じた。

イベント終了後は会場で販売していた『巡礼ビジネス』に、岡本さんのサインを求める長蛇の列が。戸村さんも残った参加者と交流と楽しんだ。
塚口サンサン劇場の常連だという参加者は「聖地巡礼ファンと地域のウィンウィンな関係がいいなと思った」と話し、また岡本さんのトークを聞きたくて来たという方は「今日戸村さんを初めて知りました。塚口サンサン劇場にぜひ行かなくちゃなと思いました」と笑顔で語っていた。

詳細情報
■サイト
「巡礼ビジネス ポップカルチャーが観光資産になる時代」(角川新書)
塚口サンサン劇場