10月20日(土)の夜、大阪・中津の豊崎南公園にて「秋の夜の野外上映会」が行われ、青春映画の傑作『シング・ストリート 未来へのうた』が上映された。
2012年、小児がんや白血病、先天性の脱毛症などで髪を失った子どもたちに医療ウィッグを無償提供する「ヘアドネーション」という活動を知ってもらうため、大阪・中津の美容室「KNOW HAIR STUDIO」とNPO法人「JAPAN HAIR DONATION&CHARITY」の協同企画で始まった上映会。
これまでドキュメンタリー映画や短編アニメーションなど、様々作品を上映。今回で7回目の開催となる。
今年は『ONCE ダブリンの街角で』や『はじまりのうた』などの作品で日本の映画ファンからも絶大の支持を誇るジョン・カーニー監督の青春映画『シング・ストリート 未来へのうた』を上映した。
関西の映画情報サイト「キネプレ」、大阪の映画館・テアトル梅田とシネ・リーブル梅田の協力のもと、映画招待券の抽選会も行われた。
当日はイベント開始数十分前から続々と人が集まり、上映開始頃には200人を超える大盛況に……。その後も通りかかった人たちが途中参加する姿がチラホラ見受けられた。
年齢層は10代から40代まで様々な方が集結。特に女性とカップルが多く見受けられた。
ブルーシートや折り畳みイスを各自で持ち寄り、1つのマフラーを2人で肩にかけあっている女性客や、肩を寄せ合うカップル、お酒を片手に鑑賞している女性二人組など、各々が自分のスタイルで本イベントを楽しんでいた。
映画の上映前にはシネ・リーブル梅田とテアトル梅田で公開が予定されている予告編を上映。続いて、キネプレ編集長の森田さんとテアトル梅田スタッフである西脇さんが、近日公開される映画の紹介を実施。さらに森田さんによる『シング・ストリート 未来のうた』の解説トークが行われた。
「すでに『シング・ストリート 未来へのうた』を見た人はいらっしゃいますか?」と尋ねると、3割ほどの参加者が挙手。再鑑賞にも関わらず来た方々に驚きつつも、「いつもと違う環境で鑑賞できることを楽しみに来ていただいたのだと思います。ありがとうございます」と感謝の意を述べた。
今回のイベントに先駆け、改めて鑑賞したといい「メモをとるのも忘れて、感動してしまいました」と森田さん。
舞台は1980年代、アイルランドの街・ダブリンにある「シング・ストリート高校」の落ちこぼれ学生たちがバンドを組み、成長していく青春映画。
「好きな女の子に近づくため、バンドを作るという不純でピュアな動機が青臭く、男の思い出をくすぶられると同時に『MVを作ろう』という導入部分がいかにも1980年代らしい。ぜひ、時代背景にも目を向けてご覧いただけたら」と語っていた。
続いて、森田さんは本作の見どころを2点に分けて紹介。
1つ目は音楽が生まれる瞬間が綺麗に描写されている点。「インディーズのバンドなどでは曲を制作する際、パチッとハマる瞬間がある。この映画でもそのタイミングが何度か登場するが、それが良いライブ演奏になって演奏されるまでの一連の流れ、その感動を味わってほしい」と語った。
2つ目は主人公たちの成長が描かれている点。「冴えない学生たちがバンド活動を通してキラキラしていく。『最初はダサかったのに、最後はこんなにカッコいいぞ』と。その変化に注目してもらいつつ、彼らを応援する気持ちで野外上映会を楽しんでほしい」と語り、トークを締めくくった。
18時半頃になり、ついに上映がスタート。
随所で笑いが起きるシーンがあったり、自然と体が揺れていたり、後ろで立ち見をしていた参加者の中にはライブハウスのようにリズムに乗っている人がいたりと、映画館の劇場では味わえない感覚に、風が冷たい秋の夜といえども鑑賞中は温かな空気に包まれた。
また、実際の街中の空気感が本編と重なるのも本上映会の醍醐味。公園の近くを走る車の音が聞こえてくることで映画の舞台ダブリンの街中にいるかのような感覚を味わえ、終盤のライブシーンでは秋の夜の静かな雰囲気が作中と見事に重なっていた。
上映終了後には、シネ・リーブル梅田とテアトル梅田の2館で使用できる映画招待券の抽選会も開催。
終盤の当選者発表では歓声が上がるほどの盛り上がりぶりで、幸運にも当選した10名の参加者は喜びの表情で景品を受け取っていた。
最後には、2館での一般鑑賞券が300円引きになる割引券の配布も行われ、大きな人だかりができていた。
同イベントは来年も開催予定。都会の中、集まって鑑賞できるのは、とても貴重な体験なはず。今回参加できなかった方も、ぜひ来年のイベントに参加してみてはいかがだろうか?
詳細情報 |
■サイト ・秋の夜の野外上映会 ・KNOW HAIR STUDIO ・テアトル梅田 |