学校を卒業してから10年以上、私は映画とは全く関係のない仕事をしていました。複数、そして働いていない時期もあった…のですが、せっせと映画を見ることだけは怠りませんでした。ぼんやりした性格なので、映画の内容以外はほぼこだわりのない映画好きでした。そんな私でも、何度か疑問に思ったことがあります。それは「映画はどこからやってくるのだろう」ということです。
考えたこと、ないですか?
「なぜシネマートではスター・ウォーズが上映されないのだろうか」
シネマート心斎橋はアメリカ村にある映画館です。学校が長期の休みに入ると、今や大阪のファッションの最先端の地ではなくなってしまったとはいえ、10代の男女がフラフラとあてもなくさまよう途中のオアシス?としてシネマート心斎橋に吸い込まれてくることがあります。彼らにとって映画館とは「シネコン」であり、全国どこでも同じ大ヒット映画が上映されていると信じています。第一声は大体同じです。
「今、何やってるん?」
あるいは、
「〇〇って何時からですか?」
〇〇には現在大ヒット中のテレビCMばんばん流れてる超大作のタイトルを入れて下さい。イケメン俳優主演のヤツまたはアニメが多いかな。 それに対する当館スタッフの答えは「うちでは上映してないですね~」手が空いてる場合はネットで検索して上映館を教えてあげたりしています。ある日、若者代表を絵に描いたような男子から聞かれました。「なんで?なんでここでは上映してないの?」
ごもっともな疑問。私も考えたことあります。なぜ私の家の近くの便利でポイントカードも有る映画館で私の見たいこの映画を上映してないのだ。
映画は概ね配給会社からやって来ます。稀に作った人が直接持ってくることもあります。映画は、作る人→配給する人→上映する人という順番で公開されることがほとんどです。配給する人は考えます。宣伝の予算を立て、その映画に見合った上映館はどこだろう…と。制作費がたくさんかかった大掛かりな映画は、大きなキャパシティの映画館で上映しなければ採算が合わなくなります。これは何の商売でも同じですよね。映画も然り。なので、シネマートのキャパにあっていると思われる映画が配給会社さんからやって来るわけです。もちろん、こちらの方から配給会社さんに「ぜひ、うちで上映させて下さい!」とお願いする場合もあります。時に大ヒットして「あれ? これってもっと大きい映画館で上映すれば良かったのでは?」という嬉しい誤算が起きることがあります。そして上映館が全国的に増えるというのは理想的なヒットの仕方と言えるでしょう。この夏、異例の大ヒットとなっているあの映画のように。
「映画に関係のある仕事がしてみたい」という学生さんが私のところに相談しに来ることがあります。映画に関係する仕事は様々です。作る人、配給する人、宣伝する人、上映する人。他のたくさんの業種といっしょで、人が繋ぐ仕事であると言えます。映画を仕事にしたい人も、映画鑑賞をこれから趣味にしたい人も、映画が公開される過程に興味を持って見てみると、違った楽しみが味わえるかもしれません。「私が好きな映画って□□って会社が配給してることが多いなあ」みたいにね。あと、「シネマートってとこ初めて行ったけど、めっちゃ小ちゃくてビックリ。もっと大きい映画館で上映してほしい」というようなツイートを見て、まあまあ傷ついてたりする…ということもお知らせしておきます…。
執筆:横田陽子 学生時代に神戸の映画館でアルバイト。卒業後は映画と関係の無い仕事を転々とし、 2006年シネマート心斎橋にオープニングスタッフのアルバイトとして入社。 2013年12月より上映予定表の裏に現「ヨーコのこべや」連載。 2015年よりシネ・ヌーヴォ支配人とミニシアター入門編トークイベント「ヨーコ&ノリコのおしゃべりミニシアター」不定期開催。 2016年11月から支配人業務に従事。 |