大阪・天神橋筋六丁目のブックカフェバー「ワイルドバンチ」で7月2日(月)、映画トークイベント「ヒロノブ・マチャオの『しっかし映画ぎょうさん観たで』天六SP」が開催された。
登壇者は、「青年失業家」田中泰延さんとFM802DJ・野村雅夫さん。田中さんは、サイト『街角のクリエイティブ』で映画評論コラム『田中泰延のエンタメ新党』を執筆し、「長すぎる映画レビュー」として多くのファンに知られているフリーライター。
野村さんは、FM802のレギュラー番組『Ciao Amici!』で3分間の新作映画評を行うほか、京都ドーナッツクラブの代表を務め、イタリア映画の配給や字幕制作に取り組んでいる。
本イベントは、そんな2人が繰り広げる映画についての大放談会。大盛況に終わった2017年末の開催以来、2回目となる。当初は6月18日(月)に行われる予定だったが、大阪北部地震の影響により、2週間遅れての実現に至った。
定員50名の会場は満席となり、立ち見の参加者も。熱気あふれる中、「映画を語ることについて」をテーマに、映画に惹かれたきっかけやその魅力、批評時に意識していることといった話が展開された。
まず話題にのぼったのは、過去に影響を受けた作品。予告映像などを流しながら、これまでの映画体験を振り返った。『キングコング』(1976年)、『スーパーマン』(1979年)、『まあだだよ』(1993年)などの懐かしいシーンに会話が弾む中、野村さんが挙げた『マイ・ガール』(1992年)で少女・ヴェーダを演じたアンナ・クラムスキーが映し出された瞬間、「可愛い!」と声を揃える一幕も。息がぴったり合った二人の軽妙なトークに、会場は何度も大きな笑いに包まれた。
映画の見方について話が及んだ際には、野村さんは監督の情報や作品に込められた意図ではなく、映し出されている映像だけを分析するテキスト論を紹介。「作家という軸以外にも、脚本の構造や表現の手法の軸から考えると、また別の楽しみが出てくる」と語った。
田中さんも、カットや余白の意味を解説した本を何度も読んでいるそうで、「構造分析的なことがないと、ずっと印象批評に進んでしまうなと思って、今、やり方を変えているところもあるんですよ」と明かした。参加者は時に大きく頷きながら聞き入り、中にはメモを取りつつ熱心に耳を傾ける人も見受けられた。
その後は今年の公開作の中で、2人が共通して鑑賞した作品のレビューに。『スリー・ビルボード』『デトロイト』『レディ・プレイヤー1』『グレイテスト・ショーマン』を、時に脱線を交えながら批評し、笑いを誘った。特におすすめする作品として挙げた『万引き家族』では、すでに観終えている参加者に感想を聞きつつ、要所となるシーンを解説。「なぜこの場所でこの会話をするのか、なぜこの場所はこんな状態なのか、全て説明がつくのがすごい」と野村さん。田中さんも、是枝裕和監督が報道から着想を得たというエピソードに触れ、「報道では、取り調べでは、わからないことがある。そういう声なきものの声をつぶさに見せるというのが、映画や文学の役割じゃないかな」と語った。そのほか、インタビューなどで知りえた監督の意図を紹介したり、過去の作品と比較をしたりと様々な切り口で語りつくした。
最後は、現在公開中、またはこれから公開となる映画から、1本ずつおすすめの作品を紹介。田中さんは『君が君で君だ』を、野村さんは『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』を挙げて見どころなどを語り、予定していたトーク時間を超えて大盛り上がりの中、幕を閉じた。「まだまだ語りたいこともあるので、そのうちぎょうさん映画を観たらまたやりましょう」との言葉に、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
イベント終了後も田中さんと野村さんは会場に残り、参加者と交流。来場者から花束のプレゼントがあるなど和やかな雰囲気に包まれ、尽きない映画トークとお酒に酔いしれた。参加者の一人は、「以前から好きだった2人のイベントだったので、これはと思って参加しました。すごく面白くて、今日紹介された映画は絶対観ようと思いましたね。今日は来てよかった」と顔をほころばせた。
会場となったブックカフェバー「ワイルドバンチ」は現在、平日は18時、土曜は14時にオープンし、24時まで営業。定休日は日曜・月曜。場所は大阪市北区長柄中1-4-7、「天神橋筋六丁目」駅2番出口より徒歩2分。
多数の映画ポスターやチラシが飾られた店内では、コーヒー、ソフトドリンク、ウイスキー、ビール、カクテルなどを提供。映画関連の古書や雑誌を取りそろえているほか、本や映画に関するイベントを数多く開催している。
詳細情報 |
■サイト ・「田中泰延のエンタメ新党」 ・野村雅夫さん 京都ドーナッツクラブブログ ・ブックカフェバー「ワイルドバンチ」 |