3月9日(金)に開幕した「第13回大阪アジアン映画祭」。そのインディ・フォーラム部門に入選した『種をまく人』の日本初上映が3月11日(日)にシネ・リーブル梅田にて行われた。上映後にはQ&Aセッションが開催され、竹内洋介監督、出演者の足立智充さん、岸カヲルさんが登壇。
竹内監督の初の長編自主映画『種をまく人』は、オランダの画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの人生と、彼とダウン症の姪との関係に想を得たヒューマンドラマ。
すでに海外の国際映画祭にて上映され、第57回テッサロニキ国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀主演女優賞、第33回LAアジア太平洋映画祭で最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞、ベストヤングタレント賞を受賞した。
Q&Aセッションでは、まず竹内監督が挨拶。本作を制作するに至った経緯について、「2011年の東日本大震災の夏に被災地に行った時に見たひまわりと、僕の敬愛する画家のゴッホという人物の人生と、出演もしているダウン症の僕の姪っ子。あの子の生まれた年がちょうど震災の翌年で、その影響でこういう話が浮かんだ」と語った。本作が「3月11日に日本初上映というのが感慨深い」と竹内監督。
主人公の弟・高梨裕太を演じた足立智充さんは1年以上ぶりに本作を鑑賞し、「竹内監督や岸建太朗さんに導かれるように撮影した記憶が蘇ってきた」と撮影時を振り返った。司会者から台詞が少なかったとのコメントには、「台詞が少ないという感覚は僕にはなかった。たぶん使われていないからかも」と返し、観客の笑いを誘った。
岸建太朗さんが演じる主人公・高梨光雄の母親役を演じた岸カヲルさん。竹内監督が「主演の岸さんの実際のお母さん」と明かすと、会場から驚きの声が。映画の出演は本作が初めてだったと話す岸さん。「この映画が1つの種。皆さんの心の中で考えたり、考えようとしたり、何か生き方につながればいいなと思う」とコメントした。
挨拶の後には、観客から次々とあがる質問にゲストが答えた。東日本大震災との関わりを問う質問を受け、竹内監督は「遺体撤去などをして心が病んで、病院に入ってしまった方がいるという話を聞いていた」と。さらに「心が病んだりしたとしても、時間とかいろいろ何かが変えてくれると信じて、この映画を作った」と語った。
観客の中には宮城県出身の方も。主人公・光雄が入院するに至った経緯を最初から感じとっていたと話し、映画に登場する首を傾けたひまわりが印象に残っていると感想を述べた。竹内監督は「ひまわりは自分たちスタッフが種を植えて生えたものしか使っていない」と明かし、種をまくことは「一言で言うと、祈りみたいなものだと思う」と答えた。
続いて行われたサイン会では、観客一人ひとりと丁寧に話しながらサインをする竹内監督。さらにサイン会の終了後も会場に残り、熱心な観客からの質問に答えていた。
光雄の幼い姪・知恵を演じた竹中涼乃さんに話が及ぶと監督は、竹中さんには本作中の「ある事件」までのシナリオしか渡さず、それから先のシーンは全て撮影現場にて口頭で説明することで彼女の生の感情を引き出したと明かした。
サイン会の会場にはQ&Aセッションで司会を務めた高橋剣さんの姿も。高橋さんは京都ヒストリカ国際映画祭のプログラム・ディレクター。実は竹内監督は、同映画祭が主催する国内外の若手映像作家を育成する「京都フィルムメーカーズラボ」の第1期生だという。大阪アジアン映画祭での思いがけない再会に、高橋さんと竹内監督は感激した様子だった。
『種をまく人』の次回の上映は3月16日(金)16時00分から。場所は同じくシネ・リーブル梅田。「第13回大阪アジアン映画祭」での最終上映となる。上映後に竹内監督が再び登壇予定。
同祭のオープニングセレモニーにてゲスト代表として挨拶したリム・カーワイ(林家威)監督も自身のツイッターで「『種をまく人』の竹内洋介、大阪アジアン映画祭がまいた現在日本インディ最強の種に違いない」と絶賛している。日本での一般公開は未定。
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■開催日程 3月9日(金)~3月18日(日) ■料金 ■開催会場 ■サイト |