3月4日(日)、大阪・堂島のホテルエルセラーン大阪で、毎年春恒例の「おおさかシネマフェスティバル」が開催され、ベストテン発表と表彰式に菅田将暉さん・桐谷健太さん・蒼井優さんら豪華ゲストが多数登壇。浜村淳さんの名司会に会場は爆笑に包まれた。
「おおさかシネマフェスティバル」は、1976年に「第1回映画ファンのための映画まつり」としてスタート。中断していた時期もあるが、名称や開催場所を変えながら継続してきた。2006年から「おおさかシネマフェスティバル」として開催している。関西在住の映画ファンが、前年度の邦画と洋画のベストテンと個人賞を選び表彰するイベントで、今年で42年目を迎える。毎回豪華なゲストが登場し、チケットが完売するほど人気だ。
総合司会は浜村淳さん、司会は蕭秀華(しょう・しゅうか)さん。2人はオープニングから息の合ったやり取りを見せ、浜村さんが映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のタイトルを間違えた話を披露するなど、会場を盛り上げた。
最初の表彰はワイルドバンチ賞の『月夜釜合戦』。佐藤零郎監督とプロデューサーの梶井洋志さんが登壇した。
佐藤監督は実際に長年釜ヶ崎に通い、今はあまり使われなくなった16ミリフィルムでこの映画全篇を制作。浜村さんは釜ヶ崎と名付けられた由来を語り、この映画で描かれている地域が再開発のため、どんどん見た目がきれいになっている反面、街の雰囲気や独特の味わいが消えてゆきつつあることが惜しいと話した。
新人監督賞は『ハローグッバイ』の菊地健雄さん。本作は2人の女子高生と認知症の女性との交流を描いたもの。浜村さんは、女子高生役のふたりのみずみずしい演技と劇中の音楽を高く評価。音楽賞は同じく『ハローグッバイ』の渡辺シュンスケさん。渡辺さんは俳優としてこの映画に出演しており、感想を聞かれると「音楽のほうがいいです。演技は難しい」と苦笑しながら回答。
撮影賞は『幼な子われらに生まれ』の大塚亮さん。複雑な物語を撮るときの気持ちを浜村さんに聞かれ、「普通に撮るだけです」とプロ意識をのぞかせた。
脚本賞は『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也さん。この作品では、最果タヒさんの詩集を映像化することに挑戦している。
監督賞は『彼女がその名を知らない鳥たち』の白石和彌さん。蒼井優さんのそれまでのイメージとは全く違う役柄なので、オファーを受けてもらえないのではと心配していたそうだ。
そして、受賞式は俳優部門へ。
新人女優賞は『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石橋静河さん。コンテンポラリーダンサーでありながら、女優としても活躍の場を広げている。母親の原田美枝子さんは2015年におおさかシネマフェスティバルの助演女優賞を受賞していた。
新人男優賞は『君の膵臓をたべたい』の北村匠海さん。「今年1年はさらに努力していきたい」と抱負を語った。
助演女優賞の田中麗奈さんは、『幼な子われらに生まれ』で複雑な家族関係の中に生きる主婦を演じた。映画が良かったため原作を買ったと言う浜村さんに、田中さんは「原作者の重松清さんにちょっと貢献できましたね」と笑顔を見せた。
助演男優賞のユースケ・サンタマリアさんは、登場するなり受賞者に握手を求めて、観客の笑いを誘っていた。過去作や芸名の由来などの話が展開し、話題がなかなか受賞作の『あゝ、荒野』にいかないと思いきや、浜村さんが『あゝ、荒野』後篇を観ていないことが判明。「後篇にすごくいい場面があるんですよ!ぜひ観てください!」とユースケさん。大爆笑の授賞式となった。
2年連続で主演女優賞を受賞した蒼井優さんは「『彼女がその名を知らない鳥たち』は不快な人しか出てこない作品ですが、白石監督と仕事がしたくて集まったキャストとスタッフで創りました」、「自分の役がスタッフに嫌われると、お客さまにはもっと嫌われるので、そこのバランスは注意しました」と話した。
途中、蒼井さんが「すごいですね、浜村さん、昔の作品も観ていただいているんですね」と驚き、「当たり前です、登壇者の作品は全部観てます」と答えた浜村さんに、『あゝ、荒野』の後篇を観てもらっていないユースケさんが立ち上がってツッコミを入れる一幕もあった。
主演男優賞の桐谷健太さんは2011年『オカンの嫁入り』以来の登壇。受賞作『火花』を『花火』と言い間違えて恐縮する司会の蕭さんに、すかさず「間違ってどうすんねん」とツッコむ浜村さんに会場が沸いた。
ここで、欠席と伝えられていた菅田将暉さんが、急遽スケジュールを調整して出席と発表され舞台に登場すると、ひときわ大きな歓声と拍手が起こった。
トロフィーをさっさと渡して『そこのみにて光り輝く』の話を始める浜村さんに、桐谷さんが「そんなざっくり、3年前の話聞きます?」とツッコむ場面も。2人が『火花』での主演男優賞受賞ということから「いま何か漫才できませんか?」と無茶ぶりをする浜村さん。「僕ら、作中でもコンビじゃないので……」と困惑する菅田さんと桐谷さんの姿に観客は爆笑。菅田さんは「『あゝ、荒野』後篇観てくださいよ!」と浜村さんにたたみかける一幕もあり、大阪出身の2人が浜村さんとの関西弁でのやりとりを楽しんでいる様子が見られた。
桐谷さんは「漫才師にしっかり見えることが大事。代々木公園やカラオケボックスで練習したり、いきなり劇場に立たせてもらってウケたりスベったりを実際に経験した」と役づくりを語った。正直なところ2人は、知人の3人に1人からは「観たよ、『花火』」と言われ、「『火花』やねんけど…」と思っていると明かした。
外国映画作品賞は『ラ・ラ・ランド』。配給会社の担当者が登壇。「ヒットしたでしょう?」と聞かれ、「『ムーンライト』って言われたらどうしようと…」と、米国アカデミー賞での作品名取り違え事件を題材に笑いを誘った。
日本映画作品賞は『彼女がその名を知らない鳥たち』が受賞。「おおさかシネマフェスティバル」が最も心を打つ作品として選んだ。蒼井さんが「後半、台本にないシーンが追加になり、私も阿部サダヲさんも関西出身ではないので、新たに関西弁の台詞を勉強して一生懸命覚えたが、後で観たら全部カットされていた(笑)」と裏話を披露。「でも、飛行機で例えると、ほしいシーンへ飛んでいくための滑走と飛んだあとの着陸の部分だったので、そのおかげでそのシーンがすごく良いものになった」と振り返った。
最後に、この映画についてコメントを求められた白石監督は「一昨年の10月に大阪で作った映画が大阪でこのように作品賞をいただいて大変ありがたい。『楽しく』という感じの映画ではないかもしれないが、最後まで楽しんでください」と話した。続いて蒼井優さんが「昨年も来たら良かったなと思うくらい。こんなに笑い泣きされている方がいて、すごく楽しい式典でした。多くの映画祭に呼んでいただいたが、こんなところはなかなかない。これからもいろんな俳優仲間がここに参加すると思うが、私もまた戻って来られるように頑張りたい」と述べて締めくくった。
司会の浜村淳さんは豊富な映画の知識を背景に、関西人にはおなじみの立て板に水の語り口でゲストと軽妙なトークを繰り広げ、会場は終始リラックスした和やかな雰囲気に包まれていた。
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■サイト ・おおさかシネマフェスティバル |