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ウイスキーに注目して映画の新たな楽しみ方を提供 エッセイスト武部好伸さんが新著発刊

大阪在住のエッセイスト・武部好伸さんの新著『ウイスキー アンド シネマ2 心も酔わせる名優たち』が淡交社から発売中。ウイスキーがひときわ輝く映画47作を新たに厳選し、ウイスキーと映画の「素敵な関係」を紹介。

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読売新聞の元記者で、現在は映画やウイスキー、ケルト文化などをテーマにエッセイストとして活躍する武部さん。昨年10月には、大阪が日本における映画上映の最初の地であることを呼びかける『大阪「映画」事始め』(彩流社)を発刊し、大きな話題を呼んだ。
今作は、自身が愛する「映画」の中の「ウイスキー」にまつわるエッセイをまとめた『ウイスキー アンド シネマ 琥珀色の名脇役たち』の続刊となっている。

「大人のお酒」というイメージがあるウイスキーに、武部さんが出会ったのは33歳の時。親戚から偶然「グレンフィディック」のボトルを貰い受け、衝撃を受けたそう。
「ボトルをポンと開けた瞬間、体に電流が走りました。初めての風味を感じながらショットグラスでキュッと飲むと、神の啓示を受けた気分ですよ(笑)。やっぱり30代からはこだわったお酒を味わおうと思い、よく行く場所も居酒屋からバーに。たんなる『酒飲み』から『酒好き』に変わりましたね」
そこから記者ならではの現場主義の精神がうずき、蒸溜所のあるスコットランドを巡るなど、文化や歴史にも関心が及ぶようになったという。1997年には『ウイスキーはアイリッシュ』(淡交社)を初めて出版。その縁から、ウィスキー業界の雑誌「Whisky World」での今作のエッセイ連載につながった。「1杯のウイスキーが人生を変えるとはまさにこのこと」と武部さんは笑顔で話す。

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前作(左)と今作(右)

前作と同様、往年の名作から最新作までウイスキーが輝く47作を厳選。その中で、ウイスキーの銘柄や飲み方、秘められたエピソードなど、ウイスキーが発信する情報を読み解いている。
例えば『容疑者Xの献身』(2008)では、福山雅治演じる天才物理学者・湯川が、旧友との再会の手土産に選んだボウモアの17年物。「ウイスキーの聖地」と呼ばれるアイラ島に蒸溜所をもつボウモアは、手土産にするには高価なお酒だ。不思議に思った武部さんは、「17年ぶりの再会」という年月にかけた演出なのではと考えた。また、原作小説で湯川が日本酒を持参したことを発見した時は、意味づけを再確認し嬉しくなったという。
他にも多種多様のお酒がある中、ウイスキーが映画の中で「名優」となる理由を尋ねると、「熟成する、ということが大きいですね。品質管理など非常に手間暇をかけて、最低3〜5年は寝かせています。その分こだわりや地域性が生まれるので、ウイスキーごとに様々な物語が含まれているんです」と語ってくれた。

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自宅に買い揃えたウィスキーの棚の前で、瓶を手に語る武部さん

行きつけのバーは50軒ほどあり、その場で執筆のヒントをたくさんもらったという武部さん。映画に少ししか登場しないウイスキーの銘柄は、信頼を置いているバーテンダーに写真で確認をとったり、偶然出会ったバーテンダーからウイスキーの印象的な映画を教わったりと、専門家の協力を得て出来上がった本となった。
しかし一方で、普段ウイスキーを飲まない若い人にも楽しんでもらいたい。そこで「知識の説明になりすぎないよう、映画の情景描写や面白いエピソードも入れて遊び心を出しました。ウイスキー通の目線とのバランスを取るのが難しかったですね」とこだわりゆえの苦労を覗かせた。また、「締めの1杯」として47作に追加したおまけのエッセイや、カバーの隠れた袖部分にも、武部さんらしい「遊び心」が光る。第3弾に向けては、「次は、ウイスキーの飲み方や仕草も含めて、その人物の性格描写まで深く踏み込んでいきたい」と意欲を見せた。

なお同書の発刊記念イベント第3弾として、12月22日(金)に北新地のバーUKでトークライブが開催される(すでに満席)。
12月28日(木)には、堺のバーKANEDAでイベント第4弾を開催予定。

詳細情報
■サイト
『ウイスキー アンド シネマ2 心も酔わせる名優たち』
武部好伸さんブログ