6月25日(日)塚口サンサン劇場にて、映画『美しい星』吉田大八監督によるティーチインが開催。吉田監督の過去作『桐島、部活やめるってよ』の公開時にもティーチインを行い話題となった同劇場。再び開催ということもあり、多くのファンが詰めかけた。
『美しい星』は、三島由紀夫が手がけた異色のSF小説を映画化した作品。ごく普通の家族・大杉家の人々が、ある日、父・重一郎(リリー・フランキーさん)が火星人、息子・一雄(亀梨和也さん)が水星人、娘・暁子(橋本愛さん)が金星人、母・伊余子(中嶋朋子さん)が地球人として覚醒。美しい星・地球を救う使命に目覚めるが、次第に世間を揺るがす大騒動を巻き起こす、というストーリー。吉田監督が長年映画化を希望した作品でもある。
今回ティーチイン前の吉田監督にインタビュー行い、ティーチインにかける思いを聞いてみた。まず、吉田監督は以前に同劇場が開催した『桐島、部活やめるってよ』でのティーチインについて「公開後、少し落ち着いてきたタイミングでティーチインが開催されて、またすごく盛り上がったみたいで、(映画が)なんとか首の皮一枚つながった、と思いました(笑)」とコメント。さまざまな解釈ができる作品であることが映画ファンの心をくすぐり、同劇場で鑑賞したファンからも「2012年のナンバーワン」と評価する声も多かった。
吉田監督は『桐島、部活やめるってよ』の公開後に多くのティーチインを経験。「作品を観てくれた人と話すことが、自分の中でこんなに大きな意味を持つとは予想していなかった」と振り返り、続けて「映画を作るときに無意識でやってきたことに気づかされることが多いですね。お客さんたちの『こう感じた』というお話を聞いていると、自分の知らないところでどんどん映画が大きく育っているような気がして面白いなと。映画づくりって、ここまでやってはじめて終わった感じがするなと思いました」と、ティーチインが映画づくりに影響するポイントについて語った。
SNSが普及したことで、今は誰でも気軽に映画の感想が発信できる。さまざま解釈ができる作品の場合、解釈の正解を求められることもありえる。吉田監督は、ティーチインで解釈の答えを求められた場合、答えたくないときは答えないという。「映画は、見た人のものにしてもらってもいいと思っています。監督が何か言うと、どうしても正解のように聞こえるし、その人の解釈を邪魔するのは嫌なんです」と思いを語った。また『美しい星』についても「抱腹絶倒のコメディと思っても、変わったSF映画と思っても、感動の家族ドラマと思ってもいい。その幅が、映画の豊かさだと思うので」と話してくれた。
『桐島、部活やめるってよ』同様、『美しい星』もさまざまな解釈ができる作品。だからこそ、作品を観た後は誰かと感想を語り合いたい気分になる。吉田監督は「考える余地を残すのが癖かも」と、自身の映画について分析。そのうえで「観たあとでそういう気分にさせている責任は感じているので(笑)、それにはできるだけ応えたいと思っています。SNSを使わない人もいるし、作品を観たあとの人の表情って、情報が豊かなんです。手応えをしっかり感じることができます」とティーチインを開催する意味、映画づくりにおいて観客の感想を求める理由について明かした。
今後のティーチインの開催についても「映画を作った責任としてできるだけ続けたいし、話すことで自分にとっても映画の最後の仕上げをしている感じがする」と前向きな吉田監督。「実は『桐島』を作ってるときのことって、あまり思い出せないんですよね。公開後に直接いろんな感想をもらった経験(ティーチイン)の記憶のほうが大きくて。その経験を通じて、映画が届いたことを実感できたし、幸福な映画になったなと感じます」とコメントしてくれた。
インタビュー後に開催されたティーチインには、作品を鑑賞した多くのファンが集まった。ティーチインには吉田監督のほか、急遽、朴木浩美プロデューサーも参加。参加者からは、長年の夢だった映画化についての感想や、リリーフランキーさん演じる父・重一郎の火星人のポーズについての裏話、原作と映画の違いについて質問が飛び交った。その質問ひとつひとつに笑いを交えながら答える吉田監督と朴木プロデューサー。集まったファンたちは、どんな質問でも丁寧に答える吉田監督を通して、作品の面白さを再確認する贅沢な時間を過ごしていた。
映画『美しい星』予告編 |
詳細情報 |
■サイト ・映画『美しい星』公式サイト ・「相当濃厚で癖になる味がする作品」30年越しの想いが実現、吉田大八監督最新作『美しい星』公開へ ・塚口サンサン劇場 |