イングリッシュガーデンを舞台に1人の女性の成長する姿を描く『マイ ビューティフル ガーデン』が4月29日(土)よりシネ・リーブル梅田にて上映中。作品の公式サイトでは植物や庭の写真の投稿を募ったインスタグラムキャンペーンも実施され、新緑の美しいこの時期を盛り上げる。
不規則なものを恐れ、本と自分という孤立した世界でひっそりと暮らす主人公ベラ。変化やイレギュラーを嫌う彼女のクローゼットは同じ洋服が1週間分ならび、洗面台には曜日ごとに準備した歯ブラシの列。食糧棚にはこれまた同じ缶詰がずらり。勤務先は規律と秩序の保たれた図書館だ。
生まれてすぐ公園に捨てられた彼女は、予測不能な自然の変化や植物の営みを恐れ、自宅の庭にさえ足を踏み入れられない。だが、荒れ放題の庭を理由に、家主から退去命令を出され、1か月で庭をもとどおりにするという難題を突きつけられる。孤独と引き換えに、変化のない安心安全なくらしを守り続けてきたベラだったが、庭づくりをとおして、新たな変化を少しずつ受け入れてゆく……というストーリー。
世界最大規模のガーデニングショー、チェルシーフラワーショーに代表されるようにガーデニング大国であるイギリスでは、ガーデニングが日常に根付き、庭は大切な生活の一部として愛されている。
イングリッシュガーデンの特徴は、植物の自然なままの姿を生かすというところ。人工的な美しさを楽しむため、きっちり枝葉を刈り込み、左右対称、幾何学的に配置するフランス式とは対照的だ。
作中で、指南役となった隣人の偏屈老人アルフィーは、自身が手掛けた愛する庭を「美しい秩序を保った混沌の世界」と評する。手つかずの庭を放置するベラを疎ましく思っていた彼だが、庭づくりそして人生の教えを伝授していくなかで、彼女へあたたかなまなざしを送るようになる。それに応えるように、変化を恐れながらも、変わりたいと望むベラの内面も、次第に、予定調和の世界をはみだして豊かに育まれてゆく。
ベラの成長とともに、絵本作家を目指す彼女が紡ぐ物語、そしてささやかな恋模様も見所のひとつだ。想い人ビリーの発明品、機械仕掛けの鳥、ルナ。登場人物のルナや、彼女が出会う旅人に、ベラ自身やアルフィーを投影したかのような物語は、外の世界へ一歩を踏み出したからこそ生まれた作品だ。不器用ながらも自分の殻を破ろうと動き出すベラをルナを、思わず応援したくなってしまうのは、アルフィーも観客である私たちもきっと同じだろう。
スクリーンに広がる緑と花々、鳥の声、虫の羽音、風のにおい。サルビア・タチアオイ・クレマチス、と、次々と接写される庭の植物。まるでアルフィーの、そしてベラの庭に迷い込んだかのごとく感じられる情景と、現代のおとぎ話のような、やさしく、不思議と可笑しみのある世界観。『アメリ』を彷彿とさせる、小粋であたたかな今作を作り上げたのは、ポール・マッカートニーの長女の夫でもあり、ファッションブランドや大手企業のコマーシャル、ミュージックビデオを手掛けるサイモン・アバウド監督。プロダクションデザインは『ハリーポッター』シリーズを担当したアレクサンドラ・ウォーカーによるもの。
人気ドラマ『ダウントン・アビー』のジェシカ・ブラウン・フィンドレイ演じるベラを筆頭に、偏屈老人アルフィーに名優トム・ウィルキンソン、とぼけた魅力でなごませる料理人ヴァーノンには演技派アンドリュー・スコットが配されている。彼らのチャーミングな愛すべきキャラクターやファッションが、絵本の中のような情景や作品世界と見事に調和している。「秘密の花園」に心躍らせた幼い頃のように、見終わったあとにはきっと何気ない草木や花がまぶしく映ることだろう。
なおシネ・リーブル梅田では、作中写真やフラワースタンドなど、作中の雰囲気たっぷりのブースを劇場内に展示設営。鑑賞前後にも、作品の世界観に浸ることができる。
映画『マイ ビューティフル ガーデン』はシネ・リーブル梅田で、4月29日(土)より上映中。
京都シネマでも上映が予定されている。
映画『マイ ビューティフル ガーデン』予告編 |
詳細情報 |
■上映日程 ・シネ・リーブル梅田 4月29日(土)より上映中 ・京都シネマ ■映画館 京都シネマ ■サイト |