大阪の劇団・維新派の主宰・松本雄吉さんが2016年6月に逝去。維新派と縁のある大阪・九条の映画館シネ・ヌーヴォが、11月5日(土)より特集上映「松本雄吉追悼特集」を実施する。維新派の公演記録映像も。
維新派は1970年に「日本維新派」として旗揚げ。活動拠点となる劇場を定めず、劇団員自らが公演場所の野外に大規模な劇場を建設、公演が終わればそれを取り壊す、という独特の公演スタイルを持っている。旗揚げから現在まで関西を中心に様々な場所で公演を行っており、ヨーロッパやオーストラリアなど海外進出も実現した。演目の特徴として、会話劇ではなくリズムと印象的な単語を中心に構成された「ヂャンヂャン☆オペラ」と称される前衛的な劇形態で観客を魅了。多くのファンを獲得している。
その維新派を47年もの間牽引してきた松本さんが2016年6月に逝去。それを受け、同年10月に奈良・平城宮跡で行われた公演を最後に、維新派は解散が告知されていた。
今回シネ・ヌーヴォで特集上映されるのは、維新派と松本さんが残した映像作品19作となる。
シネ・ヌーヴォと維新派との関わりは深く、松本さんが劇場創設時の内装・外装意匠を手掛けた。「水中映画館」と呼ばれるような幻想的な内装は、訪れた者を映画世界という非日常へ誘う役割を果たしているという。また、外装の印象的なバラのオブジェは劇場の目印となっており、いずれも維新派劇団員たちが施工した、世界で唯一実存する維新派の建造物となった。
その原点は、シネ・ヌーヴォ開館の10年前の1987年、京都で映画『1000年刻みの日時計』上映専用の映画館として作られた「千年シアター」だという。1か月の興行終了とともに解体したが、映画館を作りたい、という思いが、10年後にシネ・ヌーヴォに結実した。
「僕たちは無機物としての館内をつくっただけだ。それを有機物にしていくことが君たちの仕事だよ」松本さんはシネ・ヌーヴォ創設時にそんな言葉を残した。その言葉を受け継ぎながら、シネ・ヌーヴォは来年1月に20周年を迎える。現在はその節目に合わせて、クラウドファンディングで改装工事費用を募っている。
そんなシネ・ヌーヴォでの今回の特集上映は、維新派の息吹を感じつつ彼らが歩んだ軌跡を辿ることができる、唯一の場所となるだろう。
上映作は、松本さんが参加した作品のほか、維新派の公演記録映像12本など。
特集上映「松本雄吉追悼特集」は11月5日(土)より11月18日(金)まで大阪・九条のシネ・ヌーヴォで実施。毎日2作上映予定。
詳細情報 |
■開催日程 11月5日(土)~11月18日(金) ■料金 ・当日 ■映画館 |