「観察映画」の手法で知られるドキュメンタリー監督想田和弘さんの最新作『牡蠣工場』が第七藝術劇場、神戸アートビレッジセンターなどで公開へ。心斎橋のスタンダードブックストアでは、書籍発刊記念トーク企画も。
想田和弘さんは、ニューヨーク在住のドキュメンタリー映画監督。小泉政権時代に自民党から出馬した山内和彦さんの様子を撮影し、日本の選挙活動の一端を浮き彫りにした『選挙』(2007年)で一躍話題となった。その後は、精神病患者を題材にした『精神』(2008年)、劇作家平田オリザさん率いる青年団を映した『演劇1』『演劇2』(2012年)、山内さんを再び取材した『選挙2』(2013年)などを制作。ナレーションや音楽を一切入れない「観察映画」と呼ぶスタイルを確立した。
最新作『牡蠣工場』(2015年、145分)では、岡山県の牡蠣工場で働く人々が題材。かつては約20あった牡蠣工場が過疎化などの理由で現在は6軒に減少。宮城県南三陸町で牡蠣工場を営んでいた渡邊さんが震災で被害を受け、牛窓の地に移住して工場を継ぐこととなる。労働力を補うため、中国からの労働者を雇うが、言葉や文化の違いによるコミュニケーションの難しさに直面。岡山の小さな町を舞台にしながら、グローバル化、少子高齢化、過疎化、労働問題、移民問題、さらに震災の影響など、さまざまな問題を多角的にあぶりだす作品だ。
想田さんは以前から漁師の世界に関心を抱いていたという。漁師の数がだんだん減っていることに対して「水産物への需要はこれからも増えそうなのに漁業が廃れていくのは、いったいなぜなのだろう」と考えていたのが、本作を撮影することにつながっていった。
同作公式サイトで、「本作は『変化』についての映画だと僕は解釈している」と話す想田さん。「牡蠣工場という小さな世界を覗いてみたら、そこにより大きな世界の縮図が見えた」と振り返っている。
また今回、想田さんは書籍「観察する男―映画を一本撮るときに、監督が考えること―」を2016年1月に出版。同作を制作中の想田監督を、ミシマ社編集部が取材することで制作された書籍だ。
今回はこの書籍の出版と、『牡蠣工場』公開を記念して、大阪・心斎橋のスタンダードブックストアで2月8日(月)夜、想田監督のトークイベントを開催。「観察映画」の手法に迫る。トークの相手は、社会学者の岸政彦さん。
映画『牡蠣工場』は、大阪・十三の第七藝術劇場で2月27日(土)から、神戸アートビレッジセンターで3月12日(土)からそれぞれ上映が決定している。
トークイベントは、2月8日(月) の19時30分から、大阪・心斎橋のスタンダードブックストアで開催。料金は1ドリンク付き1,500円。
『牡蠣工場』予告編 |
詳細情報 |
■イベント日程 『観察する男』刊行記念 想田和弘×岸政彦トークショー 2月8日(月) 19時30分~ 料金:1,500円(1ドリンク付き) ■イベント会場 ■上映日程 ・神戸アートビレッジセンター ■映画館 神戸アートビレッジセンター ■サイト |