震災描く映画が元町映画館で上映　神戸出身の渡辺さんも登壇

阪神・淡路大震災から21年目を迎える1月17日（日）の前日、1月16日（土）から神戸・元町映画館で『LIVE!LOVE!SING!生きて愛して歌うこと劇場版』の先行公開がスタート。それに合わせ、本作品の監督をつとめた井上剛監督、神戸出身の渡辺大知さんが登壇し舞台あいさつを行った。

撮影現場のエピソードを語る渡辺大知さん

本作は、震災の影響で離ればなれになった子ども達が、立ち入り禁止区域となった福島県の母校にタイムカプセルを掘り起こしに行く様子を描いたロードムービー。阪神・淡路大震災をきっかけに生まれた歌「しあわせ運べるように」を軸に、神戸と福島、ふたつの震災を結ぶ映画となっている。2015年にNHKにて全国放送されたテレビドラマに未公開シーンを追加し再編集したものだ。
監督は連続テレビ小説『あまちゃん』でチーフ演出をつとめた井上剛さん。キャストには「E-girls」のメンバーであり、多くの映画やドラマに出演する石井杏奈さんを始め、神戸で結成されたロックバンド「黒猫チェルシー」のボーカル渡辺大知さん、アイドルグループ「NMB48」のメンバーとして活動する木下百花さんなど、フレッシュな顔ぶれがそろう。

神戸の地で舞台あいさつをする井上剛監督（左）と渡辺大知さん

1月16日（土）当日は、朝に福島県で上映を行った後、劇中と同じように福島・神戸間を移動してきたという井上監督。元町映画館に集った観客に「神戸と福島両方が描かれている作品は珍しいと思う。神戸の方にこの映画を観ていただけて感無量です」と笑顔を見せた。舞台あいさつは二人のトーク形式で、撮影中のエピソードを中心に話が広がった。
撮影を行ったのは2年前。神戸出身の渡辺さんは当時「福島での撮影を終えてから神戸に行った時、あまりに平和な神戸の街が非現実的に見えた」という。福島では人のいない土地での撮影だったこともあり「こんなに普通に人が歩いているのが不思議」と感じたそう。撮影現場の話になると「台本はもちろんあってセリフは書かれているのですが、実際の現場ではイメージしたものは忘れて演技をしました。つくろうものが通用しない現場だったんですよ」と振り返る。井上監督は、演出する時でもある程度役者に任せていたといい「石井さんら子どもたちもその場の空気を敏感に感じ取り、撮影に挑んでいたように思う」と話す。実際に、台本に書かれていないことをキャスト自ら考え演技をしているシーンが多々あったという。「用意をしていくとか意図的に何かするとかではなく、その場での一瞬を感じて、どうなるか分からないものに向かっていきたい、そんな気持ちになれたのが良かった」と渡辺さんは振り返る。

福島での撮影は、人がいない寂しさなどからキャスト・スタッフともに精神的につらい部分があったが、それを救ってくれたのが祭のシーンだった。この場面では、実際に撮影した土地に震災前まで住んでいた方約400人にエキストラとして参加してもらったそうで、避難するためばらばらになってしまった人々があの日に限り、以前住んでいた場所に集合。近所の方ともう一度巡り会えた日になったことで、久しぶりの再会に気持ちが盛り上がっていき、良いシーンになったという。本作の音楽をつとめた大友良英さんもこのシーンに参加したが、雨男として知られる大友さんが肝心な本番に雨を降らしたことを謝罪したというエピソードに、場内からは笑いも起こった。

「人からパワーをもらえた」と話す井上剛監督

福島で一人暮らす女性を演じたともさかりえさんから、どういう感じで演じればいいかと相談をされたという井上監督。「非常に悩んでいたようだけど、最終的にこの祭のシーンや、参加してくれたエキストラの様子を受け止め、翌日撮影された浜辺でのシーンも思い切り演じられたのだと思う。やっぱり人からパワーをもらえるものなんだなとすごく感じた」と話した。

お客さんからの質問にも答えるなど、終始和やかに行われた舞台あいさつ。終了後にはお客さんによる写真撮影も行われ、2人は「たくさん撮って周りの人に宣伝してください！」と呼びかけた。パンフレット購入者を対象にしたサイン会も行われ、舞台あいさつでは聞ききれなかったことを話したり、談笑したりする様子が見られた。