阪神・淡路大震災発生からちょうど21年を迎えた1月17日(土)の前夜、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋で『LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』の舞台あいさつが開催。
NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のチーフ演出もつとめた井上剛監督と、ロックバンド「黒猫チェルシー」の渡辺大知さんが登壇した。
『LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』は、阪神・淡路大震災で兄を亡くした高校教師と、東日本大震災で被災し神戸へ避難してきた女子高生を中心としたロードムービー。被災の過去とどう向き合うのか、悲しみの形が違う者同士は分かり合えるのか、観客一人一人に語りかける映画作品となっている。出演は、E-girlsの石井杏奈さん、地元・神戸で活躍する黒猫チェルシーの渡辺大知さんら若手俳優を中心に、ともさかりえさんや中村獅童さんら演技派俳優が脇を固める。音楽は、阪神・淡路大震災の被災者のその後を描いた『その街のこども 劇場版』も手がけた大友良英さん。
作中で印象的に使われているのが、阪神・淡路大震災で被災した神戸市内の小学教諭の臼井真さんが復興を願って作詞・作曲した楽曲「しあわせ運べるように」。同曲が本作の最初と最後に流れるのだが、「この曲の聞こえ方がどうやって変わるようにするのかが、最大のテーマだった」と井上監督は話し、そのための演出の裏話を披露した。
渡辺さんは同曲について、「小学3年生頃から歌っていたけれど、最初はこそばゆい感じがあった」と振り返りながらも、「メロディに惚れて、家とかで口ずさんでしまう、何気なく歌ってしまう瞬間がある。これが歌の力」と語り、井上監督も大きく頷いた。
『その街のこども』と同じく、ドキュメンタリー的な撮影のされ方をしている本作。たとえば作中のある印象的な雨のシーンでは、意図したものではなく、突然雨が降ってきたのでそのまま撮影を敢行したり、NMB48の木下さん演じる香雅里のあるシーンでは、彼女が走り出すタイミング、向かう方向、到着地点での演技が全てアドリブに任されたりと、即興を重視した撮影の舞台裏が披露された。
井上監督は、「普通のドラマのように何度もリハーサルしたり、カメラが先回りしたりするのは違うと感じた。ドキュメンタリー的な撮り方を意識した」と話すと、渡辺さんは「撮影中でも、自分が次にどんな場所に行くのか分からなかったが、角を周ったところのドアや、草を初めて見るその一瞬一瞬を大事にしていた」と振り返った。
あいさつの最後には、観客との質疑応答も行われ、キャスティングに関して問われた井上監督は、「大地君は神戸出身、皆川猿時さんは東北出身、ともさかりえさんはお父さんが福島出身で、南果歩さんも神戸に思い入れがあって、とそれぞれ作中にゆかりのある人たちばかり。なのでこちらから出演をお願いした」と話した。また、ほっこりしたエピソードはあるかとの質問に「立入制限区域などの緊張する場所に行ったとき、ロケバスで若い子らがうるさかったから翌日から一人一人を別にした。そうしたら、『もう騒ぎませんから、ロケバスを一緒にしてください』と謝りだした」と話し、会場の笑いを誘った。
最後に渡辺さんは、「この作品を見て、自分の思ったことをまわりに伝えて欲しい」と観客に訴え、拍手の中会場を後にした。
『LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』は、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋、神戸・元町映画館で2016年1月16日(土)より公開中。京都シネマでは2月20日(土)より公開予定。
『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』予告編 |
詳細情報 |
■上映日程 ・シネマート心斎橋 1月16日(土)~ ・元町映画館 ・京都シネマ ■映画館 元町映画館 京都シネマ ■サイト |