小説家の寒竹泉美さんが、太宰治の「斜陽」をアレンジし朗読劇に。映像を活用しながら4人の登場人物の美学を描く朗読ライブ「斜陽~それぞれの革命~」が、12月14日(日)に京都の立誠シネマで開催される。
ナレーターの沼田俊也さん、映像オペレーションを手伝う吉岡華乃子さん |
寒竹泉美さんは、京都在住の小説家。2009年に講談社から発売された「月野さんのギター」でデビュー。以降雑誌やウェブ、アプリでの物語の執筆や小説の個展、文章講座の講師など精力的に活動している。
「斜陽」は、小説家太宰治さんの晩年の有名作。元華族の良家が、戦争によって没落していく中で、4人の男女の滅びゆく様が描かれている。当時大ヒットとなり、「斜陽族」という流行語を生みだした。
「TREES」は寒竹さんと、フリーナレーターの樹リューリさん、Jプロダクション所属のナレーター柳元麻見さんの3人で立ちあげたユニットで、全員名前に「木」が入っていることから命名。2013年12月に大阪のワインバル「ムーランキッチン」で、尾崎紅葉の「金色夜叉」を題材にした朗読劇を行った。寒竹さんが原作の文章をアレンジして、脚本を作成。自身も出演をつとめる。「セリフ劇に重点を置いた、メロディの無いオペラのような感じ」だといい、それぞれの登場人物の心情を、出演者が地の文やセリフで語っていく形で物語を進めていく。
それが、立誠シネマからお呼びがかかり、2014年1月に行われた本にまつわるイベント「ビブリオシネマフェア~本と映画のステキなカンケイ~」の一環として上演された。
今回12月の開催では太宰治の「斜陽」をセレクト。「太宰は好きなんですが、好きというのが少し恥ずかしい感じがする」と笑う寒竹さん。「人間のダメっぷりをさらけ出しているのが魅力」だという。登場人物の心情が絡み合っていくのを表現したかった、「ダメな人たちがダメな会話をわいわいしていく」様子を演出したかったといい、「でもそれを映像や演劇でやると濃すぎるときもありますが、声だけで演じ、受け取り側の想像力で補ってもらうとちょうどいいかなと。時代がかったセリフの言い回しも堪能できるのではと思います」と話す。
いろいろ脚本はアレンジしたが、太宰ならではのセリフは、ほぼそのまま使っているという。脚本を書く過程、自身が演じる過程で太宰の魅力を再発見することもあった。当日出演するナレーターの樹リューリさんは「それぞれの革命、という副題を付けたのは寒竹さん。わたしが原作を読んで感じたところとは違う側面を引き出しているのが面白かった」と紹介。同じく出演するナレーターの沼田俊也さんは「言葉の強さが生かされた脚本になっていると思う。それを演じる楽しさにワクワクしています」と話す。
映画館での朗読劇、という珍しいスタイルの公演。当日は映画館の音響とスクリーンを活用する。「映画館だと、耳を済ませて落ち着いて聞いていただけるので、世界を完全に作りこめるのがいい」と話す寒竹さん。音響を担当する下田要さんと、綿密な演出について打ち合わせしているという。
過去2回行った経験から、「こうした小説を自分からは読まなかったけど、イベントをきっかけに『面白いね』と言っていただける人がいることが分かった」という。「太宰は有名だけど読まれていることは少ない。その知られざる魅力を伝えたい」との思いから「小説家が、小説の良さを伝える脚本を書いて、自分たちで演じる、というのを面白がってくれる人が、もっと増えるといいなと思ってます」と意気込んでいる。
「TREES公演vol.2 朗読ライブ『斜陽~それぞれの革命~』」 は、12月14日(日)の14時からと17時30分からの2回実施予定。料金は各回2,000円。場所は、京都・河原町の立誠シネマプロジェクト。
詳細情報 |
■開催日程 12月14日(日) 14時~15時、17時30分~18時30分 ※各回開場は15分前 ■料金 ■開催会場 ■サイト |