舞台は禁酒法時代のアメリカ。フロリダに向う列車の中で、マリリン・モンロー扮する歌手シュガーが作ろうとするのが、この「マンハッタン」というカクテルだ。
ギャングから逃れるため、女性だけの楽団にもぐりこむ2人の楽士。ある夜、列車の中で、パーティがはじまる。
「まだあのベルモット持ってる?」と聞くシュガー。彼女は、いつも隠れてウィスキーをちびちび飲むほどの、酒好きなのだ。
「ウィスキーに混ぜたら、マンハッタンができるわ」とシュガーは目を輝かす。
でも混ぜるための器がない。そこで使うのが、水枕。
そして洗面台でシュガーが、シンバルを受け皿にしながら氷を割る。
ビリー・ワイルダー監督の名コメディ『お熱いのがお好き』(1959年)の1シーンだ。
そんなマンハッタンは、「カクテルの女王」と呼ばれるカクテル。一説によると、イギリスの首相チャーチルの母親がニューヨークの「マンハッタン・クラブ」で即興で作ったという。
本来はライ・ウィスキーを使うが、カナディアン・ウィスキーやバーボン・ウィスキーが使われることも多い。「キング・オブ・カクテル」と呼ばれるマティーニと比べて甘みがあって、女性でも飲みやすい。
そしてマラスキーノ・チェリーを飾るのがポイント。マンハッタンに沈む夕日をイメージしていると言われている。
マリリン・モンローが乱暴につくったマンハッタンは、レシピもきっと適当で、氷も溶けて水っぽいのでは・・・と想像する。いま飲むとたぶん不味く感じるだろう。
でも、当時は酒をおおっぴらに飲むことができなかった禁酒法の時代。こんなマンハッタンでも、きっと美味しかったはず。
なにより、マリリン・モンローと一緒に飲むだけで、男にとっては十分素晴らしい。それほどこの作品のマリリンは、男をとりこにする魅力にあふれている。
「あたし、サックス吹きに弱いの。それだけでコロっといっちゃうの」
そんなマリリンに乾杯!
レシピ ・ライ・ウィスキー 45ml (バーボン・ウィスキーやカナディアン・ウィスキーでも可) ・スイート・ベルモット 15ml ・アロマティック・ビターズ 1dash (アンゴスチュラ・ビターズを使うレシピもある) 以上をミキシング・グラスでステアし、ショートグラスに注ぐ 仕上げに、マラスキーノ・チェリーを沈める 味わい:辛口の中に甘みを感じるテイスト |