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『ほとりの朔子』をイラストレビュー/ペンギンシネマ放談 vol.01

ペンギンシネマ01こんにちは。今回から「ペンギンシネマ放談」を連載させて頂くことになったナカシマと申します。
キネプレの読者様に向けて期待の映画をレビューするという企画に、少しプレッシャーを感じていますが温かい目で見て頂ければと思います。

 

さて1回目の作品は深田晃司監督、二階堂ふみ主演の『ほとりの朔子』です。

この『ほとりの朔子』ですが、いきなり連載1回目にしてレビューが難しい映画になってしまいました。
というのも、この映画は主人公の「朔子」のひと夏の日々を淡々と描くという、もの凄く静かな映画なのです。

『ほとりの朔子』の物語は、 大学浪人中の朔子が叔母の海希江と共に、海と山のほとりの避暑地を訪れる所から始まる、叔母の友人や、その甥っ子達とのひと夏の日々のお話です。
登場人物たちの人間関係や状況が少し複雑だったりするのですが、朔子が口数少なく大人しい人間のため、大きな感情の揺れもないので淡々とした印象を与える物語になっています。
では『ほとりの朔子』つまらない映画なのでしょうか?
勿論、そんな事はありません。
この映画を見終わった後、「あのシーン良かったなぁ。あそこのシーンも良かったなぁ」と思い返して余韻に浸ってしまいました。
特にタイトルにもなっている「ほとり」を訪れるシーンは、とても美しく、必見です。

ペンギンシネマ01朔子1
『ほとりの朔子』

この『ほとりの朔子』を一つの物語として見ると、盛り上がりに欠けて見えてしまうかもしれません。
しかし、『ほとりの朔子』というタイトルの複数の短編で構成された映画と考えると腑に落ちる気がしました。
作中のストーリーを、一日一日にタイトルが付いた連続ドラマのように見ると、毎日が物語となるのです。

「ほとりの朔子」では、朔子は何を知りたいのか、何に悩んでいるのかも明確には「問」も「解」も提示されません。
でも、それは朔子自身も何に悩んでいるのか理解していないからだと思います。

物語の冒頭に、朔子は言います。
「私、空っぽだなって気が付いたの。何にも知らないし、したいことないし。」

そんな朔子も知らない街での日々を過ごす間に、作中の最後では「解」を持っているようにも見えます。
何気ない日常でも人は成長できる。そんな、朔子がゆっくりと歩みを進める姿が「ほとりの朔子」には描かれています。

ペンギンシネマ01朔子2
『ほとりの朔子』

「映画のような夏の思い出」を持っていない、自分みたいな「普通の人」に見て欲しい映画でした。
何気ない日々が、現在の日々に繋がっているのを思い出させてくれると思います。

■参照リンク
『ほとりの朔子』公式サイト
http://sakukofilm.com/
二階堂ふみ主演、18歳の夏物語 『ほとりの朔子』関西で上映へ 【キネプレニュース】
http://www.cinepre.biz/archives/10107

「ペンギンシネマ放談」は、毎月第1月曜日に配信します。
次回は3月3日(月)更新予定。お楽しみに。
(ブログ「着ぐるみ追い剥ぎペンギン」さまからの寄稿です)