2013年から2014年になるということで、1年間掲載した記事をふりかえっていたのですが。
いやあ、今年もいろいろありましたねえ。
人気のあった記事は、「2013年上半期TOP10」「下半期TOP10」を読んでもらうとして。
ここでは、印象的だったことをあげていきたいと思います。
まず、「デジタル化」という問題を抜きにしては語れない、映画業界。
一部では「2013年問題」とも呼ばれている話です。
簡単に言うと、ほとんどの新作映画が、フィルムではなくデジタルでしか作られなくなってきたのです。
フィルム映写機では、とうぜんデジタル映画は上映できない。
つまり、デジタルの上映機材をそろえないと、最新の映画を上映することができないのです。
この機材がまた、結構高くて、多くの映画館はこの導入に頭を悩ませたそうです。
映画館での変化はそれだけではなく、
「劇場内の新たな試み」
も、ちらほら見受けられるようになった年でした。
インド映画を観ながら騒いで踊る「マサラシステム」なんてのはその典型です。
ほかにも飲食を販売したり、ライブや演劇などの催しをしたり、大音量で作品を楽しんだり。
「座って静かに観る」だけの場所から、「楽しいお祭りが楽しめる場所」へと変わりつつ映画館が、すこし増えてきたのです。
映画館だけでなく、各地の映画祭にも、いろいろな変化がありました。
もともと映画祭は、学生や地元の人たちが、ボランティアで参加しているものでしたが。
そのひとたちが編み出した企画が、今年はだんだんふくらんでいったように思います。
「映画のプロ」ではないひとたちの発想が実現し、観客と同じ目線での楽しみを提供する。
少しずつですが、その萌芽が見受けられているように見えます。
といっても、明るいニュースばかりではありません。
映画業界を取り巻く状況は、相変わらず大作への一極集中。
ほとんどは邦画やアニメにお客をとられ、洋画や単館系映画はかなりさびしい状況が続いています。
そんな現状を改善しようと、関西の映画館・配給会社・宣伝会社のひとたちは、必死になって新たな企画や催しを生み出しています。
なかには成功しているのもあるし、うまくいかないのもあります。
だれもが試行錯誤している段階なのです。
一方、デジタル配信のニュースもありましたね。
パソコンやスマホ、タブレットで、気軽に映画がレンタルできる時代になりました。
わざわざ映画館に足を運ばなくてもいい。
話題作をいま観なくても、あとで配信されるのを待てばいい。
そんな空気感が生まれていて、多分これはおしとどめることはできないんだろうなあと思います。
これは、音楽や本の世界と似ていますね。
こういったニュースを受けて、キネプレとしては、
「映画館で映画を観る良さってなんだろう?」
と考えつづけた1年間でした。
もちろん映画館のファンの方の胸には、「良さ」がそれぞれあると思います。
自宅のテレビやスマホではなく、あの薄暗い空間で、大画面・大音量で観る。
映画館へ行く道で、作品への期待に胸を躍らせ。
返り道すがら、感傷にじっとひたる。
そんな良さは、デジタルにはないものです。
でも、もちろん、テレビやスマホにも、良さはあります。
手軽に安価に、良質な作品を手元に引き寄せることができる。
友達との話題にあがったとき、いきなりスキマ時間ができたとき。
過去の名作を観返したくなったとき。
デジタルは、映画との距離をずっと身近なものにしてくれています。
たぶん、それぞれの方が考える「映画館の良さ」ってのは、共通項のある話じゃないんでしょうね。
それは、ある意味文化が多様化し、成熟してきた証と言えるかもしれません。
じゃあ映画作品はどうあるべきか、映画館はどういう存在でいるべきか。
その明確な線引きに、そろそろちゃんと向き合う時期に来ているんじゃないかなあ。
なんて考えてます。
ともあれ2013年、皆さまありがとうございました。
良い2014年をお過ごしください。
関西にすこしでも、新しい動きが芽生えますように。
みんながいい映画や映像を観て、楽しい時間を過ごせますように。
そして、普段の生活が、ちょっぴり豊かになりますように。
キネプレ編集長 森田