ドキュメンタリー映画『311』の公開を控えた3月5日、大阪のビジュアルアーツ専門学校で、同映画の共同監督でドキュメンタリー作家・森達也さんの公開講座が開かれた。
ビジュアルアーツのホールで行われた公開講座。多くの聴講希望者がつめかけた。
インタビュー記事はこちら↓
■ドキュメンタリー作家「森達也」
http://www.cinepre.biz/?p=129
『311』公式サイトはこちら↓
■『311』
http://docs311.jp/
『311』は、東日本大震災を題材にしたドキュメンタリー映画。
森達也さんと映像ジャーナリストの綿井健陽さん、映画監督の松林要樹さん、そして森監督と長年タッグを組んできたプロデューサー安岡卓治さんの4人がカメラを持ち、被災地で撮影した映像をつなぎあわせて制作した。
同校教師で司会の柴田誠さんに案内され登壇した森さんは、まず最初に東日本大震災に遭遇した時の状況を説明。
東京でドキュメンタリーの選考会をしていた時で、被災地の状況がわからず居酒屋に普通に飲みに行ったこと、電車機能がマヒして帰れず、一人の家に行ってテレビで津波の映像をはじめて見たこと、その後2週間ぐらいテレビを見続けて極度の鬱状態になったことなど、その時の自分の衝撃を語った。
さらには、綿井さん、松林さん、安岡さんと4人で東北に向かう時の話を披露。
「擬似的なPTSD(心的外傷後ストレス障害)のようになっていたが、その“擬似的”を外そうとした。自分の記録のためにカメラを持っていこうと思った」と当時の決意を振り返った。
『311』撮影時の体験を話す森達也さん。
柴田さんが『311』について、「森達也主演の映画だと感じた」と話すと、森さんは「全員が撮り合っているけど、編集で森一人に絞った。現地で映画を作っているつもりになったことは一度もない。帰ってきてから安岡さんが編集を行い、他の3人はその途中途中を見て意見を出した」と制作の過程について紹介。
また『311』の映画祭での上映当時、感想が一人歩きしてネットバッシングを受けたことに言及。柴田さんが「3月の一般公開まで、見ていない方のコメントが多く並んでいた」と話すと、森さんは「ネットがなかった時代は、見なければ何も書けなかった。今は違う、見ないまま偏見で書き、それを広めることができる」と話した。
最後、ドキュメンタリーというものに対して森さんは「常に誰かの意図、バイアス加わっている、というのはいつも伝えたいこと。リアルかもしれないけど、それは制作者の主観をフィルターにしたリアルさである、と言いたい」と思いを語った。
その後は、参加者からの質疑応答の時間が設けられ、ドキュメンタリーを実際に授業で撮っている学生や、報道の現場で働いている人からの質問が飛んだ。
学生の質問に真剣に答える森達也さん。
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