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第6章 前説芸人編「燃えていいのは魂だけだ!」4/4

前述した『プロメア』の時のように、塚口サンサン劇場のイベント上映には、なくてはならないものになってきた「前説パフォーマンス」。
それ以降も様々な映画で定期的に実施され、ファンを熱狂させてきた。

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『ブルース・ブラザーズ』の時の前説

その派生として、今回の稿では少し番外編的なお話を紹介する。

内容はずばり、「映画館でDJイベント」
前説と同様に戸村さんが壇上に立ち、映画で使われた音楽や楽曲をひたすらかけていく、というものだ。

もともと私が誘ったのがキッカケだった。

思い出すのは、サンサン劇場での『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のマサラ上映があった時だった。
最後のMAN WITH A MISSION×ZEBRAHEADの楽曲「Out of Control」が流れている間中、ずっと参加者は立って、「Hey!」と叫びながら手を振り上げ続けた。
まるでフェス会場みたいだ、と思った。
その後、映画楽曲を流すDJイベントに観客として参加したこともある。

その経験を組み合わせて、「映画ファンたちが喜び、熱狂してくれるような映画音楽を、立て続けに流すことができれば、皆さん楽しいのでは」と思った。
知らない曲やカッコいい曲ではなく、ただひたすら、「ファンが喜ぶ曲」をかけ続ける。つなぎの技術を頑張ったりするわけではなく、映画や映画の音楽自体の魅力をガンガンに出すことに徹する。
そういう意味では、純粋なDJイベントではない。あくまで映画イベントとしての変則版だ。

それを、大阪のワイルドバンチで2019年5月に開催するときに、戸村さんをお誘いしたのだ。
戸村さんは思いのほか楽しんでくれて、お客さんが帰った後も、「次やる時はこんな曲も喜んでもらえそうですよね」といろんな曲をかけてくれた。
そしてその一か月後ぐらいに、こう言われたのだ。
「うちでもやりたくなったので、楽器屋にDJ機材の相談に行きました」
「え!うちって、サンサン劇場ですか?ロビーで?」
「いえ、シアター内です」
「いいですねえ!」
そうして開催されたのが、2019年8月31日「SUNSUN CINEMA MUSIC NIGHT」だった。

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当日は、『ブルース・ブラザーズ』の応援上映が終わった後の開催。
戸村さんは、このイベントを入場無料、ドリンク持ち込み自由のフリーイベントにした。
1階にある一番大きなスクリーンの「シアター4」を開放し、壇上にDJ機材をセッティング。
スピーカーコードなどを急遽つなぎ、同館自慢のスピーカーで音楽が流せるようにした。
雰囲気もクラブっぽく、ステージライトの照明を散らせた。

当日は、満席となる参加者が訪れた。
「映画館でDJイベント」
という意外性もさることながら、前説パフォーマンスによって戸村さんの楽しい企画にのることを知った人たちが、こぞってつめかけた。
戸村さんはこの日のために練習し、機材を使いながら映画音楽を一挙に30曲以上を流した。
所要時間は約1時間。ほぼノンストップだった。

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写真提供:関西キネマ倶楽部

実はDJイベントの時の戸村さんは(私もだが)、観客に「ゆっくりさせる」ことをほぼしない。ある意味ずっとトップギアで曲をかけつづける。
観客もずっとトップスピードだ。なぜかというと、すべての楽曲に「喜ぶファン」が存在するのだ。その人たちのテンションが高くなっていくと、その曲をそこまで知らない周りの人もつられて動いてしまうのだ。

だから『ブルース・ブラザーズ』でアガり、『バーフバリ』で叫び、『ボヘミアン・ラプソディ』と『グレイテスト・ショーマン』で歌い、『ゴジラ』で手拍子をする。
『AKIRA』と『パプリカ』に陶酔し、『プロメア』で飛び跳ね、『天気の子』『君の名は。』で手を振り上げ、『KING OF PRISM』(キンプリ)で踊り、『シティーハンター』で大合唱する。
その瞬間、ファンたちのそれぞれの好みのジャンルの違いは消し飛び、一体となる。
垣根を超える瞬間が訪れる。

「映画を好きでよかった」
「サンサン劇場を愛していて幸せだった」
そんな感情が参加者の中に自然とわき上がったようで、終わった後も余韻が冷めぬまま、熱っぽく語り合う姿がたくさん見受けられた。
ツイッターには「信じられるか、映画館なんだぜ、ここ」「ほんま頭おかしい(ほめ言葉)」などの文字があふれた。

このDJイベントは、また戸村さんのその場の思い付きで2回目を年末に実施することが決まり、12月21日に「SUNSUN CINEMA MUSIC “Christmas” Night」として開催した。
同じく多数の参加者がつめかけ、戸村さんは少しだけ上達したDJスキルと、前説パフォーマンスに通じるサービス精神を発揮して、大いに盛り上げた。

最後に戸村さんはこうしめくくった。
「こんなアホなことをやる映画館ですが、たくさん来ていただいてありがとうございます。
映画館で映画を観る楽しみと、『映画館って楽しい場所なんだ』ということを伝えたいです。
これからもこんな感じで、アホなことも含めてやっていきますが、ぜひどうぞ引き続きよろしくお願いします!」

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その挨拶に、万雷のような拍手が鳴った。
素敵なイベントに立ち会えたことと、愛すべき映画館がこの塚口に存在してくれたことへの、感謝を伝える拍手であった。