3月14日(水)、ABCホールにてフィリピン映画『ミスターとミセス・クルス』の海外初上映が開催。「第13回大阪アジアン映画祭」のコンペティション部門入選作品。上映後のQ&Aセッションでは、シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督が登壇。
大阪アジアン映画祭で作品が上映されるのは3作目となるベルナード監督。1作目は2014年に上映された『アニタのラスト・チャチャ』で、見事にスペシャル・メンションを受賞した。2作目は昨年の『キタキタ』で、本映画祭での上映後に本国フィリピンで一般公開されて空前の大ヒット。同国のインディペンデンス映画史上最高の興行収入を記録した。
『ミスターとミセス・クルス』は、「世界一美しい島」と言われるフィリピン最西端のパラワン島を舞台に、心に傷を抱える男女の恋を丁寧に描くラブストーリー。
主人公は結婚式当日に花嫁に逃げられた男・ラフィと、結婚生活が破綻した女・ジェラ。旅行先で偶然に出会うのだが、姓がたまたま同じ「クルス」だったことから、皮肉にも至る所で夫婦と間違われ、ひょんなことからホテルの同室になってしまう。結婚観の違いに最初は反発し合う二人だが、自分の過去や弱さをさらけ出すうち、次第に恋心が芽生え始める。
上映後、観客からの温かい歓迎の拍手の中、ベルナード監督が登壇。まず本作を制作するに至った経緯について「落ち込んでいた時期に個人的に美しいパラワン島を訪れて、気持ちの整理がついたことがありました」と振り返る。そして、「悩んでいる時は、ひとりの時間を持つことが大切。旅に出てゆっくり休めば、心がクリアになり、人生で直面する問題の答えも見つかると実感しました。それを伝えたくて、この映画を制作しました」と自身の経験がきっかけだったことを明かした。
本作は主演二人のユーモアあふれる、テンポの良い会話のやり取りがとても印象的だ。「2人は脚本通りに話しているのか」という観客の質問にベルナード監督は「リハーサルでは脚本通りに俳優に話してもらいましたが、撮影時には、ある程度柔軟に俳優のアイデアも取り入れながら撮影を進めました」とコメント。
さらに、実はパラワン島に撮影に行く前にマニラで1週間ワークショップを行い、朝10時から夜11時頃まで読み合わせをしたという。「カットを増やすと、会話の流れが不自然になります。なので、リハーサルを何度も実施したうえで、演劇のように1つの流れで俳優に演技してもらいました」と演出の意図を明かした。
本作はパラワン島の美しい映像も見どころの一つ。主人公の2人は、ボートを借りて周囲の島へ遊びに行き、そこでシュノーケリングやBBQをする「アイランドホッピング」を楽しむ。ベルナード監督は「観光客がいると映画の撮影ができないので、観光客を止めさせていただきながらの撮影でした。撮影ができるのは3時間だけとか、とても厳しい時間制限を課せられました」と撮影の苦労を明かした。
監督にトーク後、直接お話を伺うと、「本作は癒やし、結婚、愛情、コミットメント、そして自分探しがテーマ。次回の上映の際には主演女優のライザも登壇します。日本の観客の方々と再び直接お話しできるのが楽しみです」と嬉しそうな様子で語ってくれた。
『ミスターとミセス・クルス』の次回の上映は3月17日(土)15時40分から。場所は同じくABCホール。「第13回大阪アジアン映画祭」での最終上映となる。17日(土)のQ&Aセッションにはベルナード監督と主演のライザ・セノンさんが登壇する予定。
ベルナード監督とライザ・セノンさんは、3月18日(日)12時30分から15時00分まで開催されるパネルディスカッション「Spotlight: Philippines – 映画100年トーク」にもパネリストとして登壇予定。これは特集企画「祝フィリピン・シネマ100年」の1つ。会場はABC ホール近くのPINEBROOKLYN 2階。入場無料。予約不要。
「第13回大阪アジアン映画祭」は3月18 日(日)まで開催。会場は梅田ブルク7(梅田)、ABC ホール(福島)、シネ・リーブル梅田(梅田)、ほか。チケットは、各劇場にて販売。
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■開催日程 3月9日(金)~3月18日(日) ■料金 ■開催会場 ■サイト |