映画『この世界の片隅に』をロングラン上映してきた大阪のミニシアター・テアトル梅田。全国で唯一、公開初日より休映を挟まず上映してきた同館だが、ついに上映が終了。最終日となった8月25日(金)、朝早くの上映にも関わらず多くのファンが集まり、立ち見客も出るほど満員に。その感動のフィナーレをレポートする。
昨年11月12日(土)の公開以来、話題を集めてきた本作。テアトル梅田でも公開初日より上映を開始し、作品の評判の高さから公開当初より映画ファンを中心に連日満席状態に。2017年に入ってもその勢いは衰えることがなかった。そして上映期間が8月25日(金)で287日間となり、同館での『アメリ』(2001年)の204日間を大幅に抜き、同館のロングラン上映記録、歴代1位の作品となった。(歴代動員人数は第2位、歴代興行収入は第3位 ※2017年8月14日時点)
最終上映当日、同館オープンの9時を過ぎると、当日券を求める人の列が。ネットでの事前予約のチケット引き換えもあり、開場前にはたくさんの人で賑わっていた。ロビーには片渕須直監督からの直筆メッセージをはじめ、同作に関する資料などが展示。開場待ちの間、この展示を見ながら最終上映に向け、気持ちを高めていく人もいた。
入場時には最終上映を記念してロケ地マップのプレゼントがあり、劇場からのサプライズに観客も笑顔になっていた。
上映10分前になると、同館支配人・古野さんが挨拶。
287日間上映ができた喜びとともに、改めて観客に感謝を述べた。来場者全員での記念撮影の際には、観客より大きなひまわり、同作に登場するりんどうとかすみ草の花束プレゼントのサプライズが。
そして最終上映がスタート。立ち見客ができるほど満員となったシアターが暗転すると、観客はまっすぐスクリーンを見つめ始めた。
上映中、同館支配人・古野さんとスタッフの瀧川さんにロングラン上映の裏側についてインタビューを行った。
本作をきっかけに初めて同館を訪れる人も多かったと語る古野さん。「ロフトの地下に映画館があるなんて知らなかった、っていうお客様が結構いらっしゃって(笑)。普段あまり見かけない親子連れやお孫さんを連れたシニアの方も多かったのが印象的でした」と、ミニシアターを身近にさせた作品であったと話した。
287日間の上映期間中、上映終了の危機も数回ほどあったという。古野さんは「たくさんの人が観たいと言ってくれる作品ですし、同館としても是非観てほしいと思い、上映時間を工夫してなんとか継続してきました」と振り返る。
瀧川さんは「当館の上映は終わりましたが、作品はまだ終わったわけではありません。これからも一人でも多くの人に観てほしい作品。違う劇場の上映でもいいので、是非観てほしい」と作品に対する熱い気持ちを語ってくれた。
上映が終了すると、シアター内は自然と拍手に包まれ、あたたかい雰囲気に。エンドロール中でも誰一人退出せず、全員が最後までしっかり見届けていた。
作品の余韻に浸りたい観客は、シアターから出ると展示スペースに一直線。作品を思い出しながらじっくり資料を見ている人も多く、ロビーにはたくさんの人であふれかえった。上映前に観客から受けとった花束は、主人公・すずのスタンディポップに早速ディスプレイされており、劇場の粋な演出に写真を撮る人も続出した。
上映終了後、ロビーにいた観客に話しを聞いた。
ある女性は今日が3回目の鑑賞。上映最終日と聞き、駆けつけた。「最後だから泣かないと決めていたのに、結局泣いてしまいました。素晴らしい作品です」と笑顔。
もう一人の女性は公開当初に1度鑑賞したが、最後にもう一度観たいと参加。話している間も作品の余韻に浸り、ずっと涙目だった。
主人公・すずのイラストが入った自作のポストカードを他の観客に配っていた男性は「上映が終わると聞き、何かしたいと思って作りました」と話してくれた。
Twitterではこの日の感想がいくつもツイートされており「287日もの長い間、上映本当にありがとうございました!」と劇場に感謝のツイートをする人や「きっと次のステージでもたくさんのお客さんに親しまれていくのでしょう」と、作品のこれからに期待するツイートも。
同館での上映は一旦終了したが、今後はアンコール上映なども検討していくという。
詳細情報 |
■映画館 テアトル梅田 (大阪市北区茶屋町16-7梅田ロフトB1F、TEL 06-6359-1080) ■サイト |