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『リング』中田秀夫監督が語る、新作『ホワイトリリー』と「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」

日活ロマンポルノ誕生から45年となる節目を記念し、第一線で活躍する5人の監督がロマンポルノ制作に挑む「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」がスタート。プロジェクトに参加した一人で『リング』などで知られる中田秀夫監督に、監督作『ホワイトリリー』と本プロジェクトについてのインタビューを行った。

中田監督写真(キネプレ)
中田秀夫監督

日活ロマンポルノは1971年より日活が打ち出した成人映画レーベル。「作品一本につき70分程度、10分に1回絡みシーンを設ける」という規定の元、人間の性と生き様を映し出す芸術表現を17年間追求し続けた。また、3本立て公開という量産体制で、若手にチャンスがもたらされる育成の場としても尽力。村川透、根岸吉太郎ら後の映画界で名を馳せた才能を輩出している。
今回スタートした「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」は、当時のクラシック作品上映と、今をときめく映画監督たちによる新作公開を通じ、ロマンポルノという映画表現の再評価と活性化をねらうもの。塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲の5名がロマンポルノ作品の初監督に挑んだ。

中田秀夫監督制作の『ホワイトリリー』はタイトルが暗示している通り、女性同士の愛を描いた作品。
人気陶芸家・登紀子(山口香緖里)の弟子として、同じ屋根の下に住み彼女を支える女性・はるか(飛鳥凛)。彼女達は傷ついた過去を通じ、秘密の絆で結ばれていた。そんな生活に悟(町井祥真)という若い男が踏み込んできたことにより、女二人の愛が揺らぎ、暴走を始める――というストーリー。主演を務めた飛鳥と山口は女性同士の激しいラブシーンを熱演。神秘的な印象すら与える、本作を象徴するシーンとなっている。

メイン画像
(c)2016日活

レズビアン、というテーマは中田監督自身が提案したものだと言う。その理由について「女性同士の方が、打ち寄せるさざ波ように、静かだが強い激情を表現できると考えていました。ロマンポルノはラブシーンが生命線です。女性を美しく魅せる“耽美”なラブシーンを撮るために、このテーマを選んだと言っていいと思います」と強いこだわりを込めて語った。
ちなみに、過去作『女優霊』『リング』などの脚本を担当した高橋洋から「中田監督の脚本を書く際は、どうしても女性の登場を多く取り入れたくなる」という指摘をされたことがあるという。「私自身が女性の人間的な魅力を表現することに執着するということを見抜かれていました。今回も主演の女性二人が演じる上でのキャラクター性の確立を相談しつつ追求していました」と振り返る中田監督。監督の持ち味と言える“女性を描く表現力”が、今回ロマンポルノ作品のテーマ性と合致していたという。

サブ画像①
(c)2016日活

中田監督はプロジェクトに参加した5名の監督陣の中で唯一、過去7本の日活ロマンポルノ作品で小沼勝監督らの下、助監督を務めた経験を持つ。「私は日活ロマンポルノに憧れて日活撮影所に入った人間ですので、今回のお話をいただいた時は“原点帰り”という想いが頭をよぎりました。ですので、二つ返事で参加を決めたんです」と深い思い入れを明かした。
ロマンポルノならではのエピソードも。往年はこういったジャンルに対する世間の認識が厳しく、ラブシーンの撮影はほとんど撮影専用のハウススタジオ内で行われていたという。今回の『ホワイトリリー』では屋外、しかも神社敷地内でのラブシーンがあるが、周辺地域への配慮を丁寧に行ったそうだ。
たとえば撮影前の住民へ向けた説明会で、ロマンポルノの文化的な意義をきっちりと説明。「神社の関係者の方で私のホラー作品ファンだと言ってくださる巫女さんから『神様はそんなに小さな存在ではありませんよ』と寛大な言葉をいただいたのは嬉しかったです。そんな周囲のご協力もあり、とても印象的なシーンに仕上がりました」とエピソードを笑顔で振り返った。

リブート・プロジェクトの参加を通じて、監督自身が気付かされたことも多いという。その一つが、観客層の広がり。「ロマンポルノ旧作特集上映でトークショーを行った時、観客の約半数が女性であることに気づきました。当時に比べると女性にも門戸が開かれて、芸術としての再評価がより進んでいるのです。ミニシアターという、より深く映画芸術に興味を持つ層が集まる場で特集上映が行われたことも関係しているのでしょう」と語った。

サブ画像②
(c)2016日活

今回のプロジェクトの意義について、監督は“次の世代へのタスキ”と表した。「今回45周年を迎えたが、この先50周年、60周年へ向けてプロジェクトの続編が企画されればと期待しています。当時のレーベルがそうだったように、また新たな監督が新しいアイデアを引っさげてロマンポルノと向き合い、才能を開花させる可能性がある。それはもしかすると女性監督や劇映画未経験の新人の可能性だってあります。もし実現するなら、私も老兵は死なずの精神でまだまだ活躍していきたいです」と笑顔で締めくくった。

『ホワイトリリー』は3月25日(土)より、シネ・リーブル梅田、京都みなみ会館、大津アレックスシネマにて公開。4月8日(土)からは神戸の元町映画館にて公開予定。

映画『ホワイトリリー』予告編

詳細情報
■上映日程
・シネ・リーブル梅田、京都みなみ会館、大津アレックスシネマ
 3月25日(土)~

・元町映画館
 4月8日(土)~

■映画館
シネ・リーブル梅田
大阪市北区大淀中1-1-88梅田スカイビルタワーイースト3F・4F、TEL 06-6440-5930

京都みなみ会館
京都市南区西九条東比永城町79、TEL 075-661-3993

元町映画館
神戸市中央区元町通り4-1-12、TEL 078-366-2636

■サイト
「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」
『ホワイトリリー』
シネ・リーブル梅田
京都みなみ会館
元町映画館