大阪の梅田ロフトで、10月6日(木)より映画『鉄コン筋クリート』公開10周年記念の作品展が開催中。10月7日(金)には梅田ロフト地下1Fのテアトル梅田で、一夜限りの特別上映会「クロナイト」が行われ、上映後には総作画監督の西見祥示郎さんとCGI監督の坂本拓馬さんのトークショーが実施された。
映画『鉄コン筋クリート』(2006年、111分)は、松本大洋さんの同名コミックが原作のアニメーション映画。暴力と退廃のはびこる宝町を舞台に、縦横無尽に滑空する二人の少年、クロとシロを主人公にした物語。ハイクオリティな映像で世界から高い評価を得ているアニメーション制作会社STUDIO4℃による作品で、3DCG技術と手描きアニメーションを併用し、公開当時は話題を集めた。主役のクロとシロの声優は、嵐の二宮和也さんと蒼井優さんが務めている。
96席限定の上映会「クロナイト」はチケット発売開始後間もなく完売。当日は立ち見のお客さんも多く出るほどの大盛況となった。
公開から10年経った今もなお愛されていることについて西見さんは「『鉄コン』のおかげでいまだに私のことを覚えて頂いているのは、本当に嬉しい。いい作品に出会えた」と感激。坂本さんは「本当にありがたいこと。作っているときは、手探り状態で余裕がなかった。自分の手がけた作品はいつも当時を思い出してしまうので観ないようにしているけど、本作は改めてまた観ようかな」と感慨にひたった。
「マイケル・アリアス監督が作りたい世界観を、僕らがどういう世界に表現するかが重要だった」と話す坂本さん。西見さんは「監督の頭の中では何年も前からビジョンが構想されていたみたいで、最初絵コンテを観た時点でこれは無理じゃないかと思った」と当時を振り返った。作品の予告編ではカラスが飛び回る43秒のシーンがあるが、その手描き原画は2か月かけて500枚を制作。西見さんは「監督の要望を受け止めながら、40枚ぐらいの背景を描きました」と笑った。
また、マンガでは2次元で描かれていた宝町を、3次元で表現することについては、監督のビジョンが明確にあったという。「とにかくCGに詳しい監督に聞いてずっとやっていた。CGの技術面など様々な面でサポートしてもらった」と坂本さんは話す。
トークショーでは、参加者からの質問に答える時間も。「10年経った今でも覚えている苦労したエピソードは」という問いには、坂本さんが「カラスが街に入っていく最初のシーンです。CGによってどこまで作品を表現できるのかを決めるカットであり、人生で一番頑張ったカットだった」と返答。一番好きなシーンについて聞かれると、西見さんは「クロがおかしくなり、イタチが出てくるあたりの箇所が気に入っている」と答えた。
最後には、作品が投げかけているメッセージ「ソコカラナニガミエル?」についてのトークに。坂本さんは「ずっと考えていたが、なかなか答えが見つからない。明確に言えない」としながらも「10年経って思ったことは、すごくいい作品に巡り合った、ということ。スタッフも皆優秀な方が揃っていて、雰囲気もよかったし、絵作りには一切妥協がなく、それぞれが最高の仕事をできた作品だと思う」と回答。西見さんは「ふつう原作があるとアニメにもいろんな要望があることが基本だけど、松本大洋さんはけっこう自由にやらせてくれた。やり過ぎたくらいの作品かも。この作品を大事にしながら、次にいかなきゃならない」と語り、トークイベントは閉幕した。
梅田ロフトでの作品展は、11月6日(日)まで開催中。キャラクターや街の原画、設定画に加え、ラストシーンを貝殻のオブジェで再現したインスタレーション「シロとクロの海辺」などが公開されている。
また、会場で数量限定販売される「絵コンテブック」の発行を記念して、671枚の絵コンテをタブレットで楽しめるBARも登場。多数のグッズも販売されており、梅田ロフト限定の10周年記念オリジナルTシャツや、作品展限定の複製原画、クリアファイル、iPhoneケースなどもある。
入場料は、一般400円、学生とロフトアプリのユーザーは300円。小学生以下無料。
詳細情報 |
■上映期間 ・梅田ロフト展示 10月6日(木)~11月6日(日) 料金:一般400円、学生・ロフトアプリのユーザー300円。小学生以下無料。 ■映画館 ■サイト |