奈良市で1979年まで運営されていた映画館「尾花座」(尾花劇場)の歴史に触れた書籍「奈良の尾花座百年物語」を、同館の元支配人・中野重宏さんが出版した。9月17日(土)から開催される、なら国際映画祭会場で限定販売される。同祭では「尾花座復活上映」も。
尾花座は、奈良市にあった映画館。もともと「尾花座」という芝居小屋だったが、1920年以降は「尾花劇場」として数々の映画作品を上映。多くの奈良市民に親しまれてきた。1979年に、『時計じかけのオレンジ』を上映して閉館。建物は解体され、跡地では「ホテルサンルート奈良」が現在運営されている。
今回は、同劇場の運営に長く携わってきた中野重宏さんが、自身の半生と尾花座の歴史を振り返る書籍を出版。地方新聞社や出版社に勤め、長年編集・ライターとして活躍されてきた宇多滋樹さんから、尾花座の歴史を中野さんから聞き出してまとめておきたい、という申し出があり、宇多さんの協力を得て完成させた。
300ページ弱の同書には、尾花劇場の歴史やエピソードが盛りだくさん。もともと中野商会が買い取って劇場運営をスタートした経緯から、ショートピクチャーとの二本立て時代への変遷、松竹との契約を終わらせての洋画上映への切り替え、そして最後にホテル業への転換などが、実際に体験してきた中野重宏さんの言葉でつづられている。
また往年の写真も多く、最後には歴史をまとめた年表も掲載されている。
現在、映画作家の河瀨直美さんがエグゼクティブ・ディレクターを務めるなら国際映画祭で、実行委員会理事を務める中野聖子さんは、中野重宏さんのご息女。今回の書籍の内容については、知らないことばかりで驚いたそうが、「同時に結局今の自分はこういう歴史の延長線上に存在しているのだと確認できた」のだという。
中野重宏さんは、同書では中野家のルーツを探り、印象的だった映画を思いつくままに記載したと話し、「仕上がったことは嬉しい反面、恥ずかしい思いもございます。ただ、巻末に付した尾花座の歴史をまとめていただいた年表は克明な記録で価値のあるものと思います。読んでいただいたら嬉しいです」とコメントしている。
同書は、なら国際映画祭の開催中に、「尾花座復活上映」企画の会場となるホテルサンルート奈良で販売。1,000円で200冊限定販売の予定だ。売り上げの一部は、なら国際映画祭の運営資金へチャリティとして活用される。
なら国際映画祭2016は、9月17日(土)から22日(木・祝)まで、奈良市の各地で開催予定。
詳細情報 |
■開催日程 9月17日(土)~22日(木・祝) ■サイト |