キネプレが2月1日(日)に呼びかけた、「映画チラシの販売目的の大量持ち帰りを控えて」というお願いが大きな反響に。関西の映画館17館も賛同する中、読者からも賛成の声が上がっている。その「チラシ転売」について今一度掘り下げる。
■以前より多かった「チラシ転売」
映画チラシを、いわば転売のため、映画館などの設置してある場所から大量に持ち帰る人がいることは、以前より多く報告されていた。
キネプレの調べでは、映画館スタッフが気づかぬ間にラックの在庫が一瞬でなくなったり、映画館スタッフに「ラックが空になってるんでチラシがもらえない」と申し出て、いったんラックを補充してもらってから全部持ち去ったりするなどのケースも。何度も映画館に足しげく運び、不必要なほどのチラシを持ち帰る者もいて、映画館側から記憶されている場合もあるという。また映画館にはその館だけでなく近隣他館のチラシも併設しているところが多く、そうしたチラシはとくに枚数が限られているため、関係者は頭を悩ませている。
■チラシを売る理由、買う理由
転売される理由はさまざまで、一つはアイドルや有名俳優が出ている映画。それだけでファン垂涎の価値となるため、大量に持ち帰る人も多いという。
もう一つは、上映館のパターン違いのコレクション。ミニシアター系映画は、チラシの裏面下部がいったん空白のまま作成されることが多い。これは、こちらに上映する映画館の情報を再印字するため(一部はハンコのところもある)。そのため、マニア・コレクターの間には「上映館の情報が違うパターンをそろえたい」と考える人もいるという。同じ理由で、公開中の映画が有名な映画祭で賞を受賞した場合は、途中から「○○賞受賞!」という文字が足されたバージョンが刷りなおされることがあるため、それもコレクションしたいと考える場合がある。
さらには、特集上映のチラシもよく対象になっている。「特集」とは、多数の映画作品をあるルールや縛り、ジャンル分けの元に一挙に上映する企画のことで、「○○監督特集」、「俳優○○特集」などから、「日本未公開作品特集」「ロック映画特集」なんてものもある。これは全国同時にされる場合もあるが、ある一館だけの企画であることも多く、その場合そのチラシのレアさが増すことになる。
多くのチラシは50円、100円という安価で販売されている。以前まではポスターや入手困難な映画グッズを販売する店がその片手間にやっていたが、近年ではネットでのオークション販売など、個人が手がけるケースもある。
■映画館側の宣伝予算の圧迫
この転売問題については、以前より映画館側や配給側から、困惑の声があがっていた。
特に宣伝予算が限られているミニシアター系映画作品では、チラシも重要な宣伝ツールであり、それが大量に持ち去られることで、本来映画の情報を知りたい人や、宣伝側が情報を届けたい人の目に触れる機会が失われることについて、「有意義な使われ方をしてほしい」との声も。映画館側がチラシを有料で買い取っている場合も多いため、単純に映画館側の予算も圧迫していることにもなるという。
一部の映画館ではこの事態に対応するため、ラック脇に「お一人様一枚までにお願いします」と表示したり、サンプルだけを展示して希望者は窓口まで申し出ることをお願いするなどの対策をとっているところも。逆に敷地の都合上入り口の外側にラックを設置せざるをえない映画館の場合は、「お客様の善意に任せるしかない」というところもある。
以前キネプレ主催で2014年12月に行ったトークイベント「映画館女子ガールズトーク in Xmas」でも、この話題に。各館とも困っているという現状が報告された。
そのあとキネプレが呼びかけたところ、関西のミニシアター系を含む映画館17館から賛同の声が上がったため、2月1日(日)付けでキネプレ側から声明を発表した。
2月2日(月)現在で賛同を発表している映画館は、大阪ではあべのアポロシネマ、第七藝術劇場、テアトル梅田、シアターセブン、シネ・ヌーヴォ、シネマート心斎橋、シネ・リーブル梅田。兵庫では神戸アートビレッジセンター、神戸映画資料館、Cinema KOBE、シネ・リーブル神戸、シネ・ピピア、塚口サンサン劇場、元町映画館。京都では京都シネマ、京都みなみ会館、立誠シネマとなっている。
■お願い表明後の影響
発表後は、記事が拡散。半日で600ツイート以上つぶやかれるなど、大きな反響となった。
「けしからん」「映画への冒涜だと思う」「このままだと、すべてのチラシがサンプル展示だけになってしまう」という憤りの声のほか、「というか、チラシって売れるんだ」「チラシを買うやつがいるのか」「買う人がいるから、こういう商売はなくならないんだよなあ」という声も見受けられている。
キネプレとしては、「販売目的の大量持ち帰り」を防ぎたいと考える。
もちろん個人の保存用、もしくは興味のある映画だから知り合いを誘うためだったり、作品が面白かったから友人へオススメするためだったり、そうした理由でチラシを使うのは大歓迎だ。
また、「自分で運営している店でチラシを設置したい」「自分で企画したイベントで宣伝してあげたい」という人は、いったん受付で相談してほしい。可能な範囲で対応していただけるはずだ。
詳しいお願いの声明文は、以下のページから。
映画作品が、より多くの「作品を観たい人」に届けられる環境が作られる、その一助となることを期待したい。