阪神・淡路大震災から20年を迎える1月17日(土)の前夜に、大阪・十三のシアターセブンで『その街のこども 劇場版』のトークショーが開催。同作の音楽を手がけた大友良英さんと、プロデューサーの京田光広さんがトークを行った。
『その街のこども 劇場版』は1995年の阪神・淡路大震災の傷跡を描いた映画作品。神戸市出身の森山未來さんと、同じく神戸で被災した経験を持つ佐藤江梨子さんを主演に迎え、震災体験を持つ男女が神戸を訪れ、追悼のつどいまでの時間を一緒に過ごすさまを描く。もともとは震災15年目となる2010年の1月17日の朝、NHKのテレビドラマとして放映。大きな反響を呼び、劇場版として製作された。
監督は朝ドラ「あまちゃん」のチーフ演出をつとめた井上剛さん。音楽は同じく「あまちゃん」などで有名な大友良英さん。脚本は『ジョゼと虎と魚たち』や『カーネーション』などの渡辺あやさんが手がけた。
毎年この時期シアターセブンで上映され、トークショーも行われている同作。今回は大友さんと京田プロデューサーが登壇。20年目の節目を迎える前夜に、作品や震災についての思いを語り合った。
「20年前の震災当時、被災した家族が安全を確保されたあと、放っておいたという思いがあった」と話す京田さん。その思いが、このドラマの制作につながったと話す。「検証をしたりドキュメンタリーを作ったりするのではなく、すくいとれない思いみたいなものを表現できないかな」と思った。
大友さんにとっては、震災が発生し、そのドラマの音楽を自身が手がけたときも「まだ他人事の感覚だった」という。そのため、「自分のような、震災の中にはいなかった外側の人間にも伝わるドラマにしよう」と音楽づくりを心がけた。その感覚は2011年の春先ぐらいまで続いていたが、そこに東日本大震災が発生。大友さんは当時のことを「それをきっかけに、違うスイッチが入ったんです。そのときにこの映画のこと、特に佐藤江梨子さんのセリフをたくさん思い出しました。実家の福島に向う時も、常に頭にはこのドラマのことがありました」と振り返る。
ドキュメンタリーらしい作り方をされている本作だが、ドキュメンタリーとドラマの違いについても言及。大友さんは「ドキュメンタリーはある見方を提示してしまいがちだけど、ドラマの方が一方向からの提示に終わらないと思います。この『その街のこども』も、森山くんと佐藤さんの会話の中に、いろんなものが見え隠れするんです」と話す。
いま大友さんと京田さん、井上さんという『その街のこども』チームで、神戸と福島を舞台にしたドラマを放映準備中だという。タイトルは「LIVE! LOVE! SING! 」。阪神・淡路大震災で兄を失った新任教師と、福島出身で神戸に暮らす女子高生、そしてその同級生たちが福島へと向かう旅の物語。今年3月放映予定。「ある意味この『その街のこども』の続編とも言える番組」と大友さんは話す。
他にも、撮影当時の森山さんや佐藤さんについての話など様々な話題を展開。質疑応答の時間も設けられ、2人は観客からの様々な質問に丁寧に返答した。
震災の影響で、震災に関するものを見ることができなかったという男性が、でもこのドラマを見てよかったという感想が述べられると、京田さんは「ドラマの放送の反響が良く、みなさんの応援のおかげで劇場版まで作らせていただいて、こうして5年後まで上映を続けることができました。そして1人の方の気持ちを動かすこともできた。すごくうれしいです」と話した。
最後に大友さんは「時間が経ってもまったく色あせない作品だと思います。この作品に参加できたことにすごく感謝しています」と締めくくった。
『その街のこども 劇場版』は、大阪・十三のシアターセブンで2015年1月23日(金)まで、神戸・新長田の神戸映画資料館で1月20日(火)まで、京都の立誠シネマプロジェクトで1月17日(土)から23日(金)まで、それぞれ上映されている。
『その街のこども』予告編 |
詳細情報 |
■上映日程 ・シアターセブン 1月10日(土)~23日(金) ・神戸映画資料館 ・立誠シネマプロジェクト ■映画館 神戸映画資料館 立誠シネマプロジェクト ■サイト |