28歳の若さで亡くなるまでの、わずか5年間の監督生活で多数の映画を手がけた天才監督・山中貞雄。その現存するフィルム作品3本を上映する特集企画が、尼崎の塚口サンサン劇場で実施される。
山中貞雄は、日本の明治から戦中に生きた映画監督。23歳で監督デビューし、28歳の若さで中国従軍中に病没。わずか5年の監督生活で、無声映画10本とトーキー作品12本を生み出した。後世の日本映画史に与えた影響は大きく、黒澤明も「山中監督ならどう撮ったか」を考えていたという。
また小津安二郎は山中貞雄のことを「生涯唯一のライバル」と絶賛。伊丹万作は「山中ほどの好漢もいない」と追悼の言葉を寄せている。時代劇の大スターであった嵐寛寿郎からも、大きな信頼を寄せられていた。
そんな山中貞雄作品だが、現存するのは3本のみ。大河内傳次郎が人情喜劇を演じた『丹下左膳余話 百萬両の壺』(92分)、美しい少女を救おうとする男たちの奮闘を描いた時代劇『河内山宗俊』(82分)、そして歌舞伎の演目「髪結新三」を映画化し、山中貞雄の遺作となった『人情紙風船』(86分)。
今回塚口サンサン劇場では、山中本人が「人情紙風船が遺作とはチト、サビシイ」と書いたことにちなみ、「山中貞雄を見たことがないのは、チト、サビシイ」と題した特集上映を企画。この3作品を一週間ずつ上映する。
同劇場担当者は、「山中貞雄の映画に漂う小市民感覚は、いつの世も共感できる」と話す。彼の描くヒーロー像は、時代劇の定番となった完全無欠なものではなく、弱さやずる賢さもある、普通の一人の人間だという。
「格調高き映画ではなく、完璧な娯楽映画。畏まる必要なんてまったくありません」と呼びかける担当者。「大いに笑って、少し切なくなって、気楽に楽しんでもらいたい。そんな姿を、山中貞雄もきっと喜ぶと信じています」と語っている。
塚口サンサン劇場での特集上映「山中貞雄を見たことがないのは、チト、サビシイ」は、6月14日(土)から7月4日(金)まで。
6月14日(土)から6月20日(金)までは『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』、6月21日(土)から6月27日(金)までは『河内山宗俊』、6月28日(土)から7月4日(金)までは『人情紙風船』をそれぞれ上映する。
観賞料金は1作品1,000円、学生・シニアは800円。
詳細情報 |
■上映日程 6月14日(土)~6月20日(金) 『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』 6月21日(土)~6月27日(金) 6月28日(土)~7月4日(金) ■料金 ■映画館 ■サイト |