ツイッター、フェイスブック。ソーシャルネットワークサービスといわれるウェブのコミュニケーションツールは、毎年おおきな発展を遂げています。
さまざまな分野で宣伝・PRにも活用され、一部では一定の効果を上げているところもあります。
一番の効果は、「発信者と受け取り側が、直接やりとりできる」というところでしょう。
顔が見えない関係から、顔が見えるやりとりへ。
いまの「広報」「宣伝」は、すこし形を変えつつあるのです。
こうしたSNSの動きは、映画業界にも当然現れています。
映画作品が公式アカウントを開設。最新情報をつぶやいたり、イベントの様子を写真でアップしたりと、様々な方法で活用しています。
映画館もそれは例外ではありません。
多くの映画館がツイッターを導入し、上映スケジュールや監督舞台あいさつなどの催しの情報を紹介。
中には、運営者の個性が光るつぶやきも多く見られるようになりました。
映画館での出来事や、個人的な感想、すこし漫才めいたやり取りまでもがつぶやかれ、映画館だけではなく、そうした「中の人」にまでファンがつきはじめています。
キネプレでは、そんな劇場の中でも存在感のある塚口サンサン劇場にインタビュー。担当者の方は、「いまは2週間ごとにどんどん作品が入れ替わっていくので、ツイッターのスピード感はありがたい」と話していました。
■[インタビュー]塚口サンサン劇場・戸村さん http://www.cinepre.biz/archives/3843 |
ツイッターに比べて、すこし導入がひかえめだったのがフェイスブックです。基本実名でやり取りするSNSですが、ここ数年企業の参入も多く、一定のファンを獲得して効果を上げるところも出始めています。
2013年の関西の映画館(大手のぞく)では、塚口サンサン劇場をはじめ、京都シネマ、京都みなみ会館、元・立誠小学校特設シアター、シネマート心斎橋、シネ・ヌーヴォ、元町映画館などが、フェイスブックを積極的に運用。中には2013年にスタートしたところもあります。
(テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、シネ・リーブル梅田は、「テアトルシネマグループ」の運営するページがあります)
使い方も様々です。カバー写真を上映中の作品のポスターにしたり、新着情報を速報でアップしたり、イベントの写真をアルバムにして後で振り返ることができるようにしたり。
映画館ファンを増やしながら、その人たちにどのような情報を届けることができるか。それぞれの映画館で働く人たちが試行錯誤しながら取り組んでいます。
■塚口サンサン劇場Facebookページ https://www.facebook.com/sunsuntheater ■京都シネマFacebookページ https://www.facebook.com/kyotocinema ■京都みなみ会館Facebookページ https://www.facebook.com/pages/京都みなみ会館/201599719982394 ■元・立誠小学校特設シアターFacebookページ https://www.facebook.com/risseicinema ■シネマート心斎橋Facebookページ https://www.facebook.com/cinemart.shinsaibashi ■シネ・ヌーヴォFacebookページ https://www.facebook.com/pages/シネヌーヴォ/1379730128918436 ■元町映画館Facebookページ https://www.facebook.com/motomachieigakan ■テアトルシネマグループFacebookページ https://www.facebook.com/ttcg.jp |
ただ、SNSでの展開・告知がすぐさま動員に結び付くかと言うと、そうとも言い切れないのが現実。「リツイートが多かった」「いいね!がたくさんついた」・・・それがそのままヒットには結びつきません。
その一方で、実際の口コミが広まり、予想以上の興行成績を上げつづけた映画もあります。
代表的なのは、山本太郎さん主演、ゲイたちの生きざまをユーモラスかつハートフルに描いた『EDEN』。
出演者たちが自ら多くの劇場に、作品の衣装そのままで登場し、ショーを披露する、という方法が多くの話題を呼び、上映期間が延長。多くの映画館で人気の作品となりました。
このことについて、キネプレに寄稿してくれたシネ・ヌーヴォの担当者は「友達、同僚、家族など、近しい人から発せられる「声」は、他のどんな素晴らしい批評や宣伝文句よりも大きな影響力を持っています」と書いています。
■クチコませる力(シネ・ヌーヴォからの寄稿) http://www.cinepre.biz/archives/4921 |
普段単館系の映画を観ない人にリーチを拡大した作品もあります。
たとえば映画『立候補』。勝ち目がないのに選挙に出馬をつづけるマック赤坂さんらの姿を捉えたドキュメンタリーです。
政治的なドキュメンタリーにも関わらず、「感動した」「最後はジーンときた」という声が続出し、多くの映画館で連日満席を動員。
延長に次ぐ延長を記録し、ドキュメンタリーになじみがない人まで巻き込んだ一大旋風を起こしました。
■映画『立候補』旋風、いまだ止まらず 京都・立誠小で凱旋上映 http://www.cinepre.biz/archives/8178 |
SNSでの拡散もいいけど、リアル口コミでの情報伝播もまだ捨てたもんじゃない。
そんな声も多く聞かれる中、でも一方スマホの普及などでSNSはずっと身近な存在になってきています。
じゃあ映画関係者、映画館のひとたちは、これからの「口コミ」をどうとらえていけばいいのか。
なかなか答えの出ない難しい問題に、みんなが取り組んでいるのです。
SNSは、拡散の効果が目に見えますが、それがそのまま結果に結び付くわけではないのが悩ましいところ。 いまだに、「自分の友達がオススメしてくるもの」が、ネット・リアル問わず、一番影響力を持っているように思います。 |