2019年9月7日に塚口サンサン劇場では『プロメア』のマサラ上映が行われた。
『プロメア』は、同年5月から上映が始まったアニメーション映画だ。
「キルラキル」「SSSS.GRIDMAN」などのアニメーションスタジオ、トリガーの映画作品で、「天元突破グレンラガン」(ガイナックス時代)「キルラキル」の監督・今石洋之さん、脚本家・中島かずきさんによるもの。
その熱い物語と演出、アニメーションのクオリティ、アガる劇伴音楽など、様々な要素が高い評価を受け、公開が始まるとともに口コミで人気が拡大。上映期間もどんどん延長されていた。
全国各地で「応援上映」も多数企画。爆音や特別音響での上映も相次いでいた。
その中で、いち早く「マサラ上映」に手を挙げたのが、塚口サンサン劇場だった。
声だけの「応援」ではなく、「マサラの聖地」とも呼ばれていた同館ではすっかりお馴染みとなった「クラッカー、紙吹雪あり」の上映の発表に、劇場ファン、マサラファン、そしてプロメアファンが熱狂した。
そして迎えた9月7日当日。
塚口サンサン劇場では、様々な仕掛けでお客さんを出迎えた。
地下2階には、ディズニー公式イラストレーターのカズ・オオモリさんによる『プロメア』ファンアートを展示。多くの人が行列を作るほどの話題となった。
写真提供:関西キネマ倶楽部
上映が始まると、まずノリノリの楽曲「Inferno」と共に、ダンサー経験のある劇場スタッフが入場。真ん中の道を踊りながら進み、ステージに上って、ダンスで観客を盛り上げた。
そして、ダンボール班が作った劇場自作の「まとい」を持ち、「塚口開墾ビーム」と書かれたTシャツを着て戸村さんが登場。
背景には、別のスタッフ(塚口映像研)が作った、プロメアの雰囲気に合わせた映像が流れている。
戸村さんは叫ぶ。
「毎日毎回が完全燃焼!これが塚口の流儀だー!」
そして吼えた。
「飛べーーー!!」
その瞬間、フェスの会場と化す劇場内。
後日、「Infernoジャンプ」と呼ばれることになる、前説最高潮の瞬間だった。
(あとで聞いたところによると、「飛べ」は思わずその場のノリで言ってしまったらしい)
ひと段落したあと戸村さんは、『プロメア』が歌舞伎からインスパイアされていることから、歌舞伎の前口上の雰囲気で前説を披露した。
途中、声が詰まりそうになると、劇場ファンから「がんばれー!」と声援が飛んだ。
この前説だけですでに使い果たしたのでは、というぐらいのクラッカーや紙吹雪が舞った。
だが上がりきったテンションは、もう下がることはない。
そして始まる本編の上映。
熱狂のままクラッカーは鳴りやまず、まき終わった紙吹雪は何度も何度も宙を舞いつづけた。
作品に合わせて赤や青の、三角やピザの形をした紙吹雪も多く、それらが劇場を美しく彩る。
観客たちは、まさしく「完全燃焼」した。
そんな興奮冷めやらぬまま帰宅した観客を驚かせたのが、当日会場にいたゲストだ。
『プロメア』を作ったトリガーの社長・大塚雅彦さんと、同作のルチアの声優・新谷真弓さん、トリガー作品に縁が深いイラストレーターのまごさんが、マサラ上映に参加していたのだ。
同劇場のうわさや、マサラ上映の話を聞いていた大塚さんのツイートを見た戸村さんが、直接相談して来阪が決まったという。
「塚口のイベントは一味違う」
そんな印象をより強く、全国の映画ファンや映画業界に知らしめたのに、この『プロメア』のマサラ上映や、2015年からスタートした前説パフォーマンスが一役買っていたことは間違いない。
そして徐々に、こんな呼び名も言われるようになってきた。
「奇跡の映画館」
「日本一楽しい映画館」
と――。