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5時間超の話題作『ハッピーアワー』関西で上映中 七芸で舞台挨拶

1月23日(土)、映画『ハッピーアワー』の大阪公開初日に伴い、第七藝術劇場で舞台あいさつが開催。濱口竜介監督、主演の田中幸恵さん(あかり役)、菊池葉月さん(桜子役)、川村りらさん(純役)が登壇した。40年に1度の大寒波到来といわれた寒空の下、客席は満席で立ち見も出るほどの盛況を見せた。

ハッピーアワー挨拶top
第七藝術劇場を訪れた4人。左から、濱口竜介監督、田中幸恵さん、菊池葉月さん、川村りらさん

『ハッピーアワー』は30代後半、4人の女性の人間関係を中心に、彼女らが直面するさまざまな悩みや不安を描き、自分や他者と向き合うとはどういうことなのか、を丁寧に描き出した作品。総上映時間5時間17分という作品自体の長さに加え、役者の大半を演技経験のない素人が務めたこと、さらに主演の4人が第68回ロカルノ国際映画祭で主演女優賞を受賞したことで話題となっていた。監督は『PASSION』『親密さ』をはじめ、東北記録映画3部作(『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』)などを手がけた濱口竜介さん。

本作の舞台は、神戸。濱口監督は実際に2013年の4月より本拠地を神戸へと移し、9月より週に1度、約5か月にわたる演技のワークショップを開催した。このワークショップの受講生が、作品に俳優として出演している。濱口監督は、「いまの日本映画のつくり方の中で、時間をかけてつくるのは難しい」と前置きした上で、「時間をかけることで商業映画とは違った厚みが映画に加わるんじゃないかと思いました」と述べた。結果として、ワークショップ期間を含め約2年という時間をかけて今作は完成している。

現場での監督の演出については、田中さんと菊池さんは「カメラの前でどう動くかというような指示はほとんどなく、ただひたすらセリフを覚えるための本読みを繰り返しました。その延長に撮影があった感じです」と口を揃えた。川村さんは、「カメラの前に立つことはハードルが高かった」と言うが、一方で「したくないことはしなくてもいいし、言いたくないことは言わなくていいということを監督がいつも言っていたので、心もとない状況の中で私はここにいてもいいんだな、無理はしなくていいだなという気持ちでカメラの前にいられた。それこそ素敵な演出だったのでは」と撮影時の心境を語り、濱口監督を称賛した。

ハッピーアワー挨拶2

ロカルノ国際映画祭での上映に立ちあった際のエピソードも。上映後にサインや握手を求める観客に囲まれ立ちすくんだといい、海外での反響の大きさが伺えた。お客さんの反応については、「純のことを心配するお客さんもいて、国は関係ないんだと思った」と菊池さん。また川村さんは、「スイスの記者さんから、日本の女性は実際にこんな問題を抱えているのかを問われ、普遍的な話題を新鮮に伝えられたのではないかと思いました」と、作品が国境を越え、観客へと届いたことに驚いた様子だった。
観客からワークショップに参加したきっかけについて質問が挙がり、3人がそれぞれの動機について語った。普段はダンスをして舞台にあがっているという田中さんは、「舞台に立つとはどういうことかを常に考えているが、濱口監督の話す、カメラの前に立つとはどういうことか、に興味をもったからです」と話した。対照的だったのは菊池さんで、自宅がワークショップ現場の近くであったことに加え、「習い事をするような選択肢のひとつとして、休日の余暇を埋めるために選択しました」と述べた。シナリオの勉強をしているという川村さんは、濱口監督の『親密さ』を鑑賞し、「演出の裏側を知りたいという好奇心」で参加したという。

神戸での普段の暮らしの中でロケハンを行ったという濱口監督。冒頭のロープウェイや三宮の街、有馬温泉やJR神戸線など、ご当地映画としてのビジュアルも存分に楽しめる作品に仕上がっている。役者への演出については、「その人、その役者の自発的なものが出てこないといけない、と思っていた」と語り、濱口作品への向き合い方を垣間見せた。濱口映画に印象的な夜明けのシーンは、「夜は昼と違い太陽の光がないので、自分の輪郭がおぼつかなくなる。そんな時間を潜り抜けて新しい自分になる」という演出意図を明かした。『ハッピーアワー』でも登場する終盤の夜明けのシーンに注目していただきたい。

『ハッピーアワー』は、大阪・第七藝術劇場で1月23日(土)より2月5日(金)まで公開中。京都・立誠シネマでは2月6日(土)より上映予定。濱口監督作品『PASSION』『親密さ』がそれぞれ1月23日(土)より1週間ごとに順次公開されている。
また、京都みなみ会館では、2月20日(土)に『ハッピーアワー』もラインナップされたオールナイト上映が予定されている。

『ハッピーアワー』予告編

詳細情報
■上映日程
・第七藝術劇場
 1月23日(土)~2月5日(金)

・立誠シネマ
 2月6日(土)~

■映画館
第七藝術劇場
大阪市淀川区十三本町1-7-27サンポードシティ6F、TEL 06-6302-2073

立誠シネマプロジェクト
京都市中京区備前島町310-2、TEL 080-3770-0818(受付、開館時間のみ対応)、075-201-5167(事務所))

■サイト
『ハッピーアワー』公式サイト
第七藝術劇場
立誠シネマプロジェクト