大阪・九条のシネ・ヌーヴォで6月11日(水)、行定勲監督が登壇。開催中の「行定勲監督特集~行定勲監督自選10作品」にあわせて、約1時間に及ぶトークショーを行った。
行定勲監督は、林海象監督や岩井俊二監督の助監督として活動した後、麻生久美子主演の『ひまわり』(2000年)で劇場公開デビュー。窪塚洋介、柴咲コウ出演の『GO』(2001年)で日本アカデミー賞最優秀監督賞などを受賞。『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)は、興行収入85億円の大ヒットとなるなど、日本を代表する映画監督となった。現在は、芦田愛菜主演の最新作『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』が6月21日(土)から公開される。
今回は、劇場デビューした『ひまわり』の上映に合わせて来阪。満席の観客を前に、約1時間に及ぶトークを行った。
「ミニシアターは観客との距離が近くて、熱があっていいですね」と話す行定監督。「ミュージシャンと違って映画監督は、観客の反応がわかりにくい。なのでこういう特集上映にお客さんが来てくれて、じかに触れ合うことができる、というのはすごくありがたい」と語った。
「若い人が映画を見ることが少なくなりました」と振り返る行定監督。「ぼくの現場に来る子たちも、黒澤・小津は知っていても成瀬巳喜男あたりになると知らない。『GO』を観ました!って言ってくれるけど、『GO』なんていいから『浮雲』を観ろと(笑)」と話す。
そのあと、今回の特集上映の10作品を選んだ理由について解説。いくつかの作品はフィルムで観てほしいというところから選んだという。「あとは、あまりお客さんが入らなかった作品を選びました」と笑いながら話した。
さらには、自身の映画作りを貫いている心情を披露。「手放しに、ぼくの映画が全部いいと言う人はあんまりいないと思う」と前置きした上で、韓国で毎回インタビューしてくれているという映画批評家に「毎回作風を変えながら撮られている」と言われた話も。「でも、共通項を見つけた、と言われたんです。それは“くるくる回る”こと、円が好きなんでしょ、と。これは面白いなと思いました」と振り返り、「そういえば最新作が、『円卓』という作品なんですが・・・」と自作の宣伝につなげて会場の笑いを誘った。
その他、東日本大震災後に岩井俊二監督と交わした会話、震災後にいろいろ考えた話も紹介。デビュー当初、良く言われた岩井監督の影響や、小津安二郎の「同じことを繰り返していくという、日常の描き方」などについても触れ、「ぼくは普段暮らしている中に寄りそってられる作品を作りたいと思って作ってきました。そこらへんに転がっている話でも映画になるんだ、ということを実証したいなと思ってます」と話す。
また代表作の1つで、シネ・ピピアで上映される『世界の中心で、愛をさけぶ』についても言及。名カメラマンと呼ばれ、同作が遺作となった篠田昇さんについて触れ、「撮影が終わって仕上げをしている時に、篠田さんがぼくに言いました。『おれが現時点で35ミリでやれることはすべてやった』と。たぶん、デジタルになる時代の流れも分かっていたんでしょう。これは彼の遺言だと思ってます。すごく迫力があって素晴らしい映像です。ぜひフィルムで観てください」と呼びかけた。
デジタル・アナログについても話が及び、「デジタル技術はまだ発展途上。ぼくらが求めるものがどれだけデジタルでできるかわからないけど、一番違うのは、安くすむということ。かかるコストが違いますから」と話す監督。「だからこれからは、そんな映画がどんどんでてくるんじゃないかな。あとはかける場所さえあれば、『これが俺の撮りたい映画だ』というのがたくさん作られていくと思ってます」と映画の未来について思いをはせた。
「行定勲監督特集~行定勲監督自選10作品」は、シネ・ヌーヴォで6月20日(金)まで実施中。宝塚のシネ・ピピアでは、6月14日(土)から20日(金)まで『世界の中心で、愛をさけぶ』がフィルム上映される。
また、最新作『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』が6月21日(土)から全国公開予定。
詳細情報 |
■サイト ・監督自らオススメの10作品一挙上映 シネ・ヌーヴォで行定勲特集[ニュース] ・シネ・ヌーヴォ ・宝塚シネ・ピピア ・『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』公式サイト |