2月16日(日)、京都の元・立誠小学校特設シアターにてトークイベント「おしえて先輩!映画館 映画館の女子力編」が行われた。
これは当劇場で公開されている『小さな町の小さな映画館』『旅する映写機』の主役が劇場とそれを支える人々ということにちなみ、関西で映画館を盛り上げているゲストを招きそれを支える人の魅力、舞台裏について語ってもらう企画だ。
2回目である今回のゲストは京都みなみ会館の吉田由利香館長。勤務6年目、今年で50周年を迎える劇場を支える女性館長だ。みなみ会館で働くことは突然決まった。大学の研究室に掲載されていたみなみ会館でのスタッフ募集に応募し、面接では「明日から来てよ」と言われ、数年後には館長になった。大学生の頃はレンタルショップでDVDを借りて映画を観た気になっていたが、劇場で働きだしてから「映画を映画館で観る楽しさを覚えたという」。
トークイベントではシネマカレッジ京都の田中誠一さんがインタビュアーを務めた。話は映画館のスクリーンの話題になり、田中さんが「みなみ会館の特徴は何か」と聞かれると「映画が映える大きなスクリーンを持っていることが自慢」と答えた。その画面を活用して関西でも数少ないオールナイト上映も行われている。ジャンルは時期によってばらばらで劇場スタッフが作品を提案している。最近ではガメラなどの怪獣映画が特集されているほか、今年の3月にもヤンキー映画特集が実施される予定だ。
「おかげでみなみ会館には様々なジャンルの映画好きがいる」という。吉田さん自身も「観る映画のジャンルは問わない。でもこのおかげで作品を提案するときに他の人の意見も受け入れることができるし、ジャンルにとらわれない考え方ができるのです」と話す。ここまではっきりと言いきるところに館長としての責任感を強く感じた。
田中さんが、京都で一番歴史がある映画館なのに職員が若いことに触れると「気づいたら若い女性職員ばかりになった。企画を提案する上で同年代の職員と気兼ねなく話せる」と語る吉田さん。そんな会議の中で生まれた企画として、金曜の朝一番の上映にあわせたモーニング企画が存在する。みなみ会館を応援しているパン屋の協力で映画鑑賞者にパンが無料配布されるというものだ。同時にドリンクも受け取ることができる。まだまだ知られていないサービスとのことで、「パンも美味しいのでぜひ食べにきて欲しい」と呼びかける。こんなサービスは珍しい。みなみ会館が提供するお客さまへの小さな贅沢だ。京都だけでなく、劇場に足を運んでくれるお客さんに向けた活動をしていきたいという想いが伝わる。
トークイベント後、吉田さんにこれからの館長としての目標についてお聞きすると「みなみ会館のことをもっと知ってほしい」という答えが返ってきた。今年50周年を迎える歴史ある劇場でなぜそう思うのか。「あまり私自身、劇場のことを知らない。どの時期にどんな作品が公開されていたか図書館にある新聞の蔵書などを使い資料研究がしたい」その声はやる気に満ちあふれていた。それをどこにつなげていきたいですかと問うと、「いつかは調べた情報をお客さんに向けてみなみ会館のことをもっと知ってもらいたい」。これからのみなみ会館を見据え、最終的に足を運んでくれたお客さまに提供する、常にその姿勢は変わらない。
これからみなみ会館は「ゴジラ」60周年に合わせて、怪獣映画特集を3月から約1年かけて行う。怪獣映画は詳しいですかと問われると、吉田さんは「あまり詳しくないです。でもこれから勉強します」とキッパリ。若いだけじゃなく、お客様1人1人に喜んでもらいたいという姿勢が50周年を迎える劇場とどのような組み合わせになるのか。2014年の京都みなみ会館から目が離せない。
※今回のレポートは、キネプレとシネマカレッジ京都の提携の元、同配給・宣伝クラス受講生が取材し、執筆したものです。
■サイト
映画館の役割、映画の価値―『旅する映写機』など関西で上映へ
http://www.cinepre.biz/archives/9796
『旅する映写機』公式サイト
http://www.eishaki.com/
『小さな町の小さな映画館』公式サイト
http://www.chiisanaeigakan.com/
「地域の映画館」について考える 映画人トーク特集
http://www.cinepre.biz/archives/10321
シネマカレッジ京都
http://cinemacollege-kyoto.com/